比嘉大吾、日本初の全15戦KO勝利 具志堅会長の無念を沖縄で晴らした

スポーツ報知
1回、フエンテス(右)に左フックを放つ比嘉(カメラ・堺 恒志)

◆プロボクシングWBC世界フライ級(50・8キロ以下)タイトルマッチ12回戦 ○王者・比嘉大吾(1回KO)同級9位・モイセス・フエンテス●(4日、那覇市・沖縄県立武道館)

 WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(22)=白井・具志堅スポーツ=が、同級9位で元2階級制覇王者モイセス・フエンテス(30)=メキシコ=に1回2分32秒KO勝ちした。日本記録に並ぶ15戦連続KOを達成し、2度目の防衛に成功。陣営の具志堅用高会長(62)が敗れて以来37年ぶり4度目となった故郷・沖縄での世界戦で日本勢初勝利。比嘉の戦績は15戦全KO、フエンテスは25勝(14KO)5敗1分けとなった。(観衆3000)

 一瞬で沖縄のジンクスを破壊した。比嘉は左のボディーとアッパーで敵の上体を浮かせると、空いた腹に重い右ストレートをぶち込んだ。わずか152秒のKO劇。初めて故郷に勝利のゴングを呼び込んだ。「王者は勝たないといけない。地元でしかもKO記録もある。プレッシャーのせいにはできない」。無数の指笛の中心で叫び、泣きながら具志堅会長に抱きついた。

 沖縄の大先輩で元WBCスーパーライト級王者・浜田剛史氏(57)らの連続KO記録に到達。デビューから15戦全KOは唯一無二だ。具志堅会長は「パンチ力のある選手は世界で一番怖いのよ。大吾しかないもの」と自身の無念を晴らしたまな弟子をねぎらった。

 試合2日前に未知の症状に襲われた。汗を出すための半身浴中、足にしびれを感じた。「やばい、今までにない状態です」と野木丈司トレーナー(57)に訴えた。減量どころか400ミリリットルの水を飲まざるをえなかった。昨年5月の世界初挑戦前は苦しみでパニック障害に陥り、「今回もいつなってもおかしくない状態」と同トレーナー。水を飲んで増量し、計算していた食事も取れない。「自分で自分のことがわからない状態だった」と比嘉。前夜は一睡もできなかった。

 緊急事態を救ったのが沖縄魂だった。プロ転向直後から会長と浜田氏に「引退したらいつでも遊べる」と忍耐の重要性を説かれた。沖縄のハングリー精神を植え付けられた秘蔵っ子。会長の用意した回復メニューで復活し、故郷の大声援が不安を吹き飛ばした。V3戦は、夏までに指名試合を行うことが有力だ。「フライ級であと3試合やる。1回はラスベガスで」と具志堅会長が言えば、比嘉も「KOがあっての自分。常に倒して特別なチャンピオンになりたい」と続いた。故郷の英雄となった2羽のカンムリワシは、上へ、上へと舞い続ける。(浜田 洋平)

 ◆比嘉 大吾(ひが・だいご)1995年8月9日、沖縄・浦添市生まれ。22歳。沖縄・宮古工高でボクシングを始める。アマ戦績は36勝(8KO)8敗。高校卒業後に上京し2014年6月にプロデビュー。15年7月、敵地タイでの王座決定戦でWBC世界ユース・フライ級王座獲得。16年7月、東洋太平洋同級王座奪取。17年5月、WBC世界フライ級王座奪取。身長160.1センチの右ファイター。

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