山中「これで終わり」潔く引退「神の左は強かったんやぞ、息子に言いたい」

2018年3月2日6時0分  スポーツ報知
  • ネリにTKO負けしてリングを後にする山中。応援してくれたファンに対して涙を流しながら最後のあいさつを行った(カメラ・清水 武)
  • 2回、ネリ(左)にパンチを繰り出す山中

 ◆報知新聞社後援プロボクシング・ダブル世界戦 ▽WBC世界バンタム級タイトルマッチ ○ルイス・ネリ(2回TKO)山中慎介●(1日、東京・両国国技館)

 元WBC世界バンタム級王者・山中慎介(35)=帝拳ジム=が、現役引退を表明した。前同級王者ルイス・ネリ(23)=メキシコ=に2回1分3秒でTKO負け。前日計量で大幅超過した相手との体重差や体力のハンデを背負った試合。昨年8月にV13を阻まれ、ドーピングなど悪質な行為を繰り返した相手に雪辱はならなかった。山中の戦績は27勝(19KO)2敗2分け、ネリは26勝(20KO)。計量失敗のネリは王座剥奪のため、王座は空位のまま。(観衆8500)

 神の左に別れの時が来た。山中は泣いた。陣営の仲間も、ファンも泣いた。計4度のダウンを喫してネリに連敗。「今後については…。もちろん、これが最後ですよ。これで終わりです」。試合後の控室で言葉をつないだ。涙をためた目は、記者やテレビカメラの奥にいるファンを見ていた。

 ネリを止められなかった。1回から前に出る宿敵に、距離を取る自分の形で入った。連打をガードでしのぐ対策も垣間見えたが、強打に耐えきれず左フックでダウン。2回も圧力をかけられて立て続けに倒れた。だが、カウントで時間を稼がずに立ち上がる。負けたくない。本能で戦ったが、最後は右でダウンを喫した。

 思わぬハンデを強いられた。前日計量でネリが制限体重53・5キロを2・3キロも超過。思わず「ふざけんな」と声を荒らげ、悔し涙を流した。2時間の猶予が与えられたネリは2度目も1・3キロ超過で王座剥奪。公平に戦えず、決戦の舞台を台無しにされた。ネリはこの日、リミット58キロの当日計量で57・5キロとし「体はもう作った」と、チーズケーキを片手に言い放った。試合まで60・1キロに増やしたネリに対し、山中は59・2キロ。会場は、試合前から怒号の嵐がネリを突き刺した。「慎介コール」とネリへのブーイングの連鎖が続いた。

 陣営の浜田剛史代表(57)は「常に冷静な山中が積み重ねたものが、他の所に行ってしまった。それがなかったら、というのもある」と精神的影響を指摘。山中は「(試合前日は)人として失格というイラつきが収まらなかった」とネリへの怒りを明かし、「ボクシング界全体でルール統一してほしい」と訴えた。圧倒的不利な条件だったが「体重は関係なく、相手が強かった。それだけ。試合には納得はしている」と潔かった。

 昨年8月にV13を阻まれた直後に、ネリのドーピングが発覚。山中は敗北の映像を何度も見返した。静まり返る会場で奇声を上げて跳びはねるネリ陣営。「相手の喜ぶシーンは気分が悪い」。屈辱の情景が夢にも出た。街中でひげ面の男を見るだけでむしずが走った。「頭の中にはネリしかいない」。3月2日以降の予定は全くの白紙。命を賭した再起だった。

 ボクサー人生を支えた代名詞「神の左」については「本当に最後まで頼りにしていた一番の武器」と誇りを持つ。日本単独2位の12戦連続防衛を成し遂げた偉大なチャンプを、リングサイドで長男・豪祐くん(5)ら家族も見守った。「息子の期待に応えられず残念だけど、目標に向かって頑張っている姿を見せられてよかった。何年たっても『パパの左は強かったんやぞ』って言いたい」。最後の1秒まで正々堂々を貫いた神の左。その強さはずっと色あせない。(浜田 洋平)

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