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今年の箱根駅伝は距離延長の4区に注目 準エースを投入できるチームは?

2017年1月1日16時0分  スポーツ報知
  • 早大・猪俣を抜き5区でトップに出た東洋大・柏原(2011年1月2日)

 第93回箱根駅伝で、勝敗を分けるポイントは4区と5区の距離変更と見る。

 往路の小田原中継所は12年ぶりにメガネスーパー前から鈴廣前に戻り、4区は18・5キロから20・9キロに延長され、5区は23・2キロから20・8キロに短縮される。

 今回の距離変更では短縮される5区が注目されることが多いが、延長される4区の方に醍醐(だいご)味がある。06年に18・5キロに短縮された後「つなぎ区間」に“降格”したが、05年までは「準エース区間」だった。第93回大会は12年ぶりに激戦区に戻ることになる。

 06~16年に往路の小田原中継所だったメガネスーパー前の標高は約10メートル。今回から再び小田原中継所となる鈴廣前は同34メートル。つまり、延長される最後の2・4キロで24メートルを上る。「小田原の市街地を過ぎると空気が変わる。ダラダラした上り坂に苦しめられるし、箱根の山から冷たい向かい風が吹きつけてくることも多い。旧中継所を過ぎてから本当の勝負が始まる、と言っても過言ではない」。事実上の区間記録保持者の駒大・藤田敦史(現コーチ)は断言する。

 大会を主催する関東学生陸上競技連盟は05年以前の記録は「参考記録」として扱うが、05年以前と17年以降の4区は実質、同じコース。1999年大会で藤田コーチが樹立した1時間56秒の事実上の区間記録は箱根駅伝史にさん然と輝く。この記録をイーブンペースとして単純計算すると、メガネスーパー前を53分56秒で通過していることになり、15年大会で当時1年の田村和希(青学大3年)がマークした区間記録(54分28秒)より32秒も速い。

 4区が準エース区間だった時代には、マラソン元日本記録保持者の藤田コーチを筆頭に多くの名選手が生まれた。96年アトランタ、00年シドニー両五輪5000メートル、1万メートル代表の早大・花田勝彦(現GMOアスリーツ監督)、08年北京五輪マラソン代表の早大・佐藤敦之(現京セラ監督)らも平塚~小田原を駆け抜けた。

 4区に好選手を投入できるということは、同じチームに同格、あるいは、同格以上のエースがいたということである。藤田コーチの年には学生トップクラスだった佐藤裕之(現スバルコーチ)、花田監督の年にはスーパースターだった渡辺康幸(現住友電工監督)が同じチームにいた。

 今回も4区に有力ランナーを送り込めるのは、やはり、強豪となる。青学大の森田歩希(2年)、東洋大の桜岡駿(4年)、早大の鈴木洋平(4年)らが区間賞を争う力を持つ。補欠登録されている青学大の下田裕太(3年)、駒大の中谷圭佑(4年)、西山雄介(4年)、東海大の松尾淳之介(1年)らが当日変更で4区に投入された場合、やはり、区間賞候補になるだろう。区間賞の記録は1時間2分前後と予想する。藤田コーチが持つ事実上の区間記録(1時間56秒)にどこまで迫れるか。もし、超えるようなことがあれば、歴史的な快挙と言っていい。“準エース”たちの健闘に期待したい。

 さて、次は箱根駅伝の名物区間の5区について書きたい。

 2006~16年の箱根駅伝で勝負の行方を大きく左右し、最も注目されていたのが5区だった。標高差864メートルを駆け上がり、しかも、23・2キロの最長区間。順大の今井正人(現トヨタ自動車九州)、東洋大の柏原竜二(現富士通)、青学大の神野大地(現コニカミノルタ)が激走し、新春の日本列島を沸かせた。

 3人の「山の神」が誕生した一方で大ブレーキも頻発。06~16年の11大会で3人が途中棄権した。第1回大会から05年の第81回大会まで5区の途中棄権が一度もないことを考えれば、限界ぎりぎりのタフなコースであることは明らか。昨年2月、主催者の関東学生陸上競技連盟は「生理学的な負担が大きい」として5区を元の距離に戻すことを正式決定した。

 06~16年の11大会で区間賞を獲得した選手のチームが7回も総合優勝。往路に至っては前回を除き、10回も優勝した。良くも悪くもチーム成績に対する比重が大きすぎた。少々、乱暴な言い方をすれば、この11大会の往路は「10点、10点、10点、10点、最後は100点!」というクイズ番組のようなものだった。

 個人的には、今回の距離変更には大賛成だ。

 長い5区を攻略するには「平地の絶対走力」+「上り適性」が求められていた。12年ぶりに5区が短縮されることで「平地の絶対走力」を持つ正統派エースは2区、あるいは4区に出場するケースが増えるだろう。

 箱根駅伝の5区はやはり特殊区間。世界のマラソンで、あれほど上り坂が続くコースはない。「世界で通用する選手を育成する」という箱根駅伝の理念を実現するためには、5区における比重を下げることは正解だろう。

 5区が箱根駅伝の“華”であることは間違いないし、これからも変わらない。ただ、やはり、エースは“花”の2区を走るべきではないか。2017年1月1日。93回目の箱根駅伝の前日、私は、そう考える。(記者コラム・東洋大陸上競技部OB、箱根駅伝担当 竹内 達朗)

 【追記】以下は箱根駅伝にまつわる我が家の小話のようなものなので、興味のない方は無視してください。

 思えば、この11年間、「スーパー区間」として君臨した5区は、その存在感が大きすぎた。かつて、箱根駅伝を駆けた者の端くれとして、それを実感したことがある。

 東洋大の偉大なる後輩の柏原が毎年、大活躍していた時のことだった。当時、小学校1年生だった息子が私に聞いた。

 息子「お父さん、昔、箱根駅伝に出たんでしょ」

 私「そうだよ。昔、昔の話だけど」

 息子「何区を走ったの?」

 私「3区と8区だね」

 息子「なんだ、5区じゃないのか」

 私「…」

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