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安易な言葉で表現しなかった住吉都さんと同じ感性を感じた、小平奈緒の言葉

2018年2月2日16時0分  スポーツ報知
  • 13年12月、ソチ五輪代表選考会で入賞し、小平奈緒(左)と手を振る住吉都さん
  • 住吉都さん(17年12月)

 もうすぐ平昌五輪。文化社会部で都庁や国会に出入りしている私だが、かつてはウインタースポーツ全般を取材する部署にいた。今回のコラムに当たり、金メダル候補のスピードスケート・小平奈緒(31)の就職苦労話を書こうか…とも思っていたが、別に取り上げたい出来事が起きた。

 ソチ五輪代表だった住吉都さんが、1月20日に長野の自室で亡くなった。急すぎで、ちょっと信じ難かった。なぜ亡くなったのかについては公表されていない。ただ1つ、このニュースを聞いて思い出した昔話があった。

 10年以上前、住吉さんが釧路北陽高に在籍していたときのこと。住吉さんの同級生だったある男子選手が、交通事故で亡くなった。彼は世界ジュニア選手権にも出場経験があり、生きていれば五輪にも出場していたであろうレベルだった。死去後に行われたある大会、住吉さんにその選手ついて聞くと「彼の分まで頑張りたいんですが…」と言いかけ、少し考えた末に「いや、彼の人生を私が生きるわけではないので、安易に言葉で表現できないです」と続けた。

 住吉さんは当時から理知的で前向きな人柄が印象的だった。そして高校生には珍しく、自分の言葉を持っていた。その時も、何歳も上の大人の問いかけだけに、その場の空気に押されて思ってもないキレイな言葉を紡いでもおかしくない。だが、住吉さんは「彼の死の悲しみを人にはきちんと伝えられない」ことと「その理由」を短い言葉で表現した。なかなか言えそうで言えない文言。ちょっと尊敬できる子だなと思った。

 24日の五輪結団式。信州大時代から同じ釜の飯を食べてきた小平は、住吉さんについて「彼女の人生を私が生きるなんてできないから…」と言った。その場にいたわけではないので細かいニュアンスは分からないのだが、「同じ感性を持つ2人だったんだな」と直感できた。途端に、大変悲しくなった。(文化社会部・樋口智城)

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