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後味の悪い“体重超過”世界戦、厳格なルール作りを急げ

2018年3月14日19時54分  スポーツ報知
  • 3月1日 2回、ネリ(右)に4度目のダウンを喫し、KO負けした山中
  • ネリの左ストレートを浴びダウンを喫する山中慎介

 ボクシング観戦歴は記者になる以前から、かれこれ35年になるが、先日、最も後味の悪い世界戦を見た。言うまでもない。1日に東京・両国国技館で行われたWBC(世界ボクシング評議会)バンタム級タイトル戦のルイス・ネリ(メキシコ)―山中慎介(帝拳)戦だ。

 ネリは前日計量で体重超過し、「前王者」としてリングに立った。計量時の超過分は2・3キロと1階級上のスーパーバンタム級でもアウト。再計量でも1・3キロ超過とひどかった。試合は、減量苦から逃避したネリと山中との体格差が歴然。ネリが4度ダウンを奪い2回TKO勝ちした。山中は引退表明。階級制で行うボクシングの根底を覆しておきながらネリは大喜び。釈然としないままネリ担当だった私は、控え室へ急いだ。

 ネリは部屋で陣営とKOシーンを何度も見返し「俺たちは勝った」と大声で繰り返した。約30分後に始まった会見では「失った王座は、勝って取り戻せばいい」と平然。体重超過に反省の弁はなく、言い訳だけを並べた。「山中に対してどういう思いか?」との質問には、陣営の1人に促されたネリが「山中に申し訳ない。日本のメディアの皆さん、すみません」とコメント。その場をやり過ごしたいだけに見えた。

 WBCは試合翌日の日本時間2日、興行主からネリに支払われるファイトマネーの大半を凍結させ、同3日にネリの無期限資格停止を発表。日本ボクシングコミッションも9日、ネリの日本での活動を永久停止すると発表した。

 多くのボクシングファンを裏切ったことを考えると、当然の処分だが、おそらく今後、ネリは他団体や日本以外の国へ活動の場を求めるのではないか。ネリの体重超過を目の当たりにし、山中は「ふざけるな」と涙した。セミファイナルに出場したIBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(28)=セレス=も「真面目に減量している僕らがバカみたいだ」と憤った。今回のネリだけでなく、近年、体重超過が世界中で相次いでいる。

 日本では17年4月の大阪で、当時WBO(世界ボクシング機構)バンタム級王者のマーロン・タパレス(フィリピン)が体重超過で王座を剥奪されたが、試合では大森将平(ウォズ)に11回TKO勝ち。驚いたのは、タパレスがその数か月後に同じWBOのスーパーバンタム級で世界ランキング入りしていたことだ。現在も世界再挑戦できる位置にいる。階級や契約体重を守るという最低限のルールが破られた時、それを裁くルールが整備されていないのが現状だ。

 ファンへの信頼回復のため、WBC、WBA、WBO、IBF(国際ボクシング連盟)の主要4団体は手を打つべきだ。例えば、体重超過した選手に対し、

 〈1〉ファイトマネーを大幅減額する。

 〈2〉試合でパンチの威力が軽減するグラブハンデを義務付ける。

 〈3〉体重の超過分に比例させ、複数年の出場停止とする。

など、それぞれの団体で多少の差はあれ、厳格なルール作りを急いでほしい。

 また、興行や放送枠の問題もあると思うが、体重超過によって両者の体重差が開き過ぎた場合、超過していない方の選手に危険が及ぶと判断すれば、各団体の権限で試合を中止するケースがあってもいいと思う。今後の各団体の議論に期待したい。今回のネリを処分するだけでは、問題の根本的な解決にはならない。(記者コラム・田村 龍一)

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