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笑顔あり、涙あり…浅田真央さんの「サンクスツアー」での幸福な絆

2018年5月17日16時0分  スポーツ報知
  • フィギュアスケート浅田真央サンクスツアーを発表した(左から)浅田舞、浅田真央、無良祟人

 ひんやりとした新潟のアイスリンク内に、温かな雰囲気が充満していた。フィギュアスケート元世界女王の浅田真央さんの「サンクスツアー」が5月に開演した。初日前日の5月2日にショーのリハーサルが公開された。笑顔あり、涙あり。真央さんが見せた表情に、10人の「真央カンパニー」の幸福な絆が浮かんでいた。

 リハーサル後の囲み取材での出来事だった。言葉が続かず、報道陣に背を向けた。「泣けてきた。ごめんなさい! ちょっとね、泣けてきちゃった。すいません! ほんっとうに本当にショーに出たことない子たちが本当に、女子は特にそうなんですけど、みんな…」。やはりどうしてもこみあげる。「大変! 本当にみんなすごく頑張ってくれて。ごめんなさい。 もう1回ちょっといいですか? 仕切り直し! いきます! はい!」

 「本当にみんなショーとか出てこない子たちばかりで、すごいあのお、緊張とかもあったと思うんですけど、私もずっとオーディショから見てきて、一緒にずーっとがんばってきたので、応募してきてくれて、それが、形になってよかったなって」。もらい泣きしそうになりながらこらえる姉の舞さん、頷きながらほほ笑む無良崇人さん。両脇で優しく見守る2人の姿も強く印象に残った。

 昨年4月に引退。8月のアイスショー「THE」 ICE」でファンに感謝の滑りを届けた後、スケートはやめるつもりでいた。スケート靴を捨てようともした。何度も迷ったが、やはり捨てられなかった。「たくさんの方に、まだまだ真央の滑りが見たいよって言っていただいたり、見られていないよっていう方が本当に多くて。まだみなさんに感謝の滑りを伝えきれていないかなって思って、このショーを始めようって思いました」。

 10月からリハーサルが始まった。今回のショーで、真央さんは80分ほとんど出ずっぱり。体を戻すことから始まった。「最初は本当に体力もそうだし、体も、現役の時より大幅にオーバーしていたので。そこから長い時間練習を積んで、久しぶりに選手生活のような練習に戻ったなという感じでした」。リハーサルでは3回転ループやダブルアクセルを難なく跳ぶ姿があった。

 出演者の選考から演出まで真央さんが行い、舞さん、無良さんがサポートした手作りのショー。トップスケーターが集う従来のショーとは異なり、3人以外のメンバーはオーディションで選出された。条件はフィギュアスケート検定6級以上。40人の応募者のなかから、18歳から29歳までの男性3人、女性4人の計7人が選ばれた。モンゴル人、スペイン人も含む国際色豊かなこのメンバーと共に、真央さんの現役時代のプログラムをメドレーで披露する。

 真央さんのオリジナルの振り付けでは難易度が高すぎる。アレンジを加えながら練習を積み上げた。舞さんは「真央のプログラムはステップが素敵だから、そこは大事にしたい」。手を加えても、難しいことには変わりはない。うまくいかない。それでもメンバーたちは「難しいけど、頑張る」と、猛練習に明け暮れた。そんな姿を真央さんは見てきた。8時間をリンクの上で過ごすこともあった。「みんながいるから、お互い助け合ってやってこられたので、すっごい大変だったとは思わなかったです。過程をすごく楽しめました」と振り返った。

 新たな試みのなかで、新たな発見はあったのかとたずねた。無良さんは「絶対振り付けとかできるよ」と、真央さんの振付師としての才能をあげた。「今回のツアーを見ていて、率先して、いろんなところ、女子のナンバーも男子のナンバーも、みんなでやるやつも、それぞれ全部こっちの方がいいんじゃない? ってどんどんアイデア出してくれるから、僕らとしてもすごいやりやすかった」と明かした。当の真央さん本人はというと「ううん…なんだろう…。ああ、自分はもう、アラサーなんだなって思いました(笑い)。みんなほとんど年下なので、世代を感じました」。真央さんらしい新発見告白に、また温かな気持ちに包まれた。

 11月にかけて新潟、長野、北海道、茨城、埼玉、山梨、福島、神奈川、福岡、広島の10か所をまわる予定。「サンクスツアー」のチケット料金は最高7500円と、ショーにしては超異例のリーズナブル価格。それも、地元住民優先で販売した。真央さんは「次のことはまだ決まっていないです。このサンクスツアーを10か所だけじゃなくて来年も続けていけたらいいなと思っているところ」と口にした。

 この半年間、最も近くで見守ってきた舞さんが「頼れる頼もしいリーダー。ほんっとうに。すごかったです」とたたえた座長のがんばりと、チームをまとめる求心力。アラサーの真央さんは、とても輝いていた。(記者コラム・高木恵)

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