世界王者・文田、リオ銀・太田に残り22秒逆転負け、準Vに号泣

スポーツ報知
男子グレコローマン60キロ級決勝でライバル・太田に敗れて頭を抱える文田

◆全日本レスリング選手権最終日▽男子グレコローマン60キロ級決勝 太田忍5―4文田健一郎(23日、東京・駒沢体育館)

 男女10階級の決勝が行われた。男子グレコローマン60キロ級決勝で、大会2連覇を狙った世界王者・文田健一郎(22)=日体大4年=は、4―5でリオデジャネイロ五輪銀のライバル・太田忍(ALSOK)に敗れた。

 国内タイトルを防衛できなかった文田は準Vに号泣し、2018年からの出直しを誓った。同フリースタイル57キロ級は山梨学院大出の世界王者・高橋侑希(24)=ALSOK=が2連覇を果たした。

 “猫レスラー”が投げに屈し、泣きじゃくった。V2を狙った文田は第2ピリオド残り22秒まで4―3とリード。だが、リオ五輪銀の太田が後方へ繰り出した、捨て身の2点技で逆転負け。国内タイトルを死守できず、マット上にうずくまった。

 銀メダルを受け取った表彰台でも、悔し涙は止まらず。「逃げ切れると思っていた。相手が(組んだ時に)すごく前に出てきて、圧力は今まで以上だった…」。決勝後、気持ちの整理がつかず、控室から約10分間、出てくることができなかった。

 8月の世界選手権(パリ)の同59キロ級で初優勝。一躍、東京五輪のスター候補生となった。豪快な投げ技だけでなく、猫カフェに通うなど、愛くるしい性格でも注目を浴びた。帰国後には、ノーベル医学生理学賞の大村智・北里大特別栄誉教授以来の韮崎市民栄誉賞も受賞。その裏で、優勝し、うれし涙で絶叫した太田を筆頭に、ライバルたちは死に物狂いで世界王者を追いかけてきた。「僕はそう(気の緩みを)感じていなかったが、この結果を見ればそうだったのかもしれない」と声を振り絞った。勝ち続けることの難しさだった。

 決勝前には、韮崎工の恩師でもある父・敏郎さんとともに「ペアレント表彰」された。笑顔で父子の握手を交わした約1時間後、王者は崩れ落ちた。控室に向かう通路で父は、息子へ「ここで終わりじゃない。これからだぞ」と背中を押した。

 天国と地獄を味わった2017年。文田は「まずは国内で勝つこと。太田選手に勝つことだけを考えます」と涙を拭いた。2020年東京五輪を見据え、来年以降の反転攻勢へ、一から出直す。(小沼 春彦)

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