リオ銀“忍者”太田、世界金“猫”文田に耐えて忍んで逆転V

スポーツ報知

◆全日本レスリング選手権最終日▽男子グレコローマン60キロ級決勝 太田忍5―4文田健一郎(23日、東京・駒沢体育館)

 男子グレコローマンスタイル60キロ級決勝が行われ、リオ五輪59キロ級銀メダルの太田忍(23)=ALSOK=が、世界選手権同級王者の文田健一郎(22)=日体大=と対戦。残り58秒で太田が逆転に成功し5―4。2年ぶり2回目の優勝を飾った。昨年大会決勝で敗れた相手に雪辱を果たした太田は、東京五輪での金メダルを誓った。

 うれしかった。ついにリベンジを果たした太田は泣いた。泣きながら右手で何度もマットをたたき、ほえた。「ずっと国内で勝てなくて。今大会で勝てなければ、階級を変更しようと思っていた」。背水の覚悟で臨んでいたことを明かし、喜びをかみ締めた。

 崖っぷちからはい上がった。「忍者レスラー」と呼ばれるスピードを生かした攻めが持ち味。昨夏のリオ五輪で銀メダルを取ったが、文田に同年末の全日本決勝で敗れ、今年の全日本選抜決勝でも負けた。「銀メダリストとして戦うことに重圧があった」。過度の注目を浴び続けたことも影響し、本来の自分を見失った。

 雪辱への道は、年下の力を認めることから始まった。「自分の方が挑むという気持ち」。大会開幕約10日前に文田へ「スパーリングをお願いします」と申し込んだ。快諾したライバルと何度もスパーをこなし「めちゃめちゃ自信を持って技をしかけてくる」と警戒を強めた。

 愛猫家でしなやかな体を持ち“猫レスラー”と呼ばれる相手の長所を理解した上で、本番で選んだ戦術は「相手には体力がなく、自分は体力に自信がある。後半勝負。残り1分で2点差ならチャンスがあると思っていた」。第1ピリオドを0―2で折り返したが、焦りはなかった。耐えて忍んで守って、好機を待った。3―4で迎えた残り58秒。スタミナが減ってきた相手を、狙い澄ました投げ技で逆転した。

 1週間前に胃腸炎となり「汚い話ですが、上から下から大変だった。3日間も練習できなかった」と調整に苦しんだが、執念で勝った。来夏の世界選手権代表に決定。「世界王者から自分の形で点を取れたのは自信になった。今後は60キロ級でいく。東京で金メダルを取るのは自分だという強い気持ちで」。日本協会によると2人の直接対決は4勝4敗の五分。文田と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、東京で頂点に立つ。(高橋 宏磁)

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