【箱根駅伝出場21チーム紹介〈16〉】東京国際大の2年生エース・伊藤、サッカー部から花の2区へ

◆東京国際大 前回不出場(2年ぶり2回目)=出雲、全日本不出場=
東京国際大のキーマン・伊藤達彦(2年)は昨夏のけがを乗り越え、一気に主軸へと成長した。10月の予選会では留学生のシテキ・スタンレイ(4年)に次ぐチーム2位、日本人総合21位と好走し、2年ぶり2度目の本大会出場に貢献。11月の記録会では1万メートル28分46秒74の自己新で、同校日本人初となる28分台をたたき出した。エースが集う花の2区の有力候補が、初のシード権獲得へ導く。
伊藤の「箱根への道」の始まりは運命的だ。サッカー部に所属していた中学時代、駅伝大会に助っ人で出場し「意外と面白い。高校でもやってみようかな」と軽い気持ちで浜松商に一般入試で入った。調理師学校へ進学する予定だったこともあり、陸上部に所属しても情熱は燃え上がらず「卒業したら就職するつもりで。箱根駅伝なんて考えたこともなかった」。当時の5000メートル自己ベストは14分33秒と平均的なタイム。大志田秀次監督(55)から「フォームはがちゃがちゃ。でも最後まで諦めない強さを見て、育てたいと思った」とラブコールを受け、東京国際大に進学した。
だが1年生の夏合宿でシンスプリント(すねの痛み)を左足に発症。約1か月半も走れない日々が続き「憂鬱(ゆううつ)だった。でも、その期間のお陰でやる気が出て、ケアもやるようになった」。それから練習後には、超音波やカーボン光線器具で筋肉や関節疲労の回復に力を入れ、オフの月曜日にも自主的に1時間半以上の筋トレを行うようになった。
けがを再発させないよう基礎筋力を増やし「箱根は足(走力)だけでは通用しない」と、スムーズな腕振りを身につけるために肩甲骨回りの筋トレも多く取り入れた。試合前には採血し体調を確認。貧血には鉄剤、低たんぱくにはサバ缶などを積極的に取るようにしている。
今年の春先にはホンダの合宿に参加。シーズン序盤から実業団選手が多く参加するレースに積極的に出場した。経験が糧になり、今季は3000メートルからハーフマラソンまで自己ベストを次々に更新し、エースに成長した。尊敬する選手は青学大の田村和希(4年)。「大学4年間かけてじゃなくて、どの学年でも活躍したい。常にチームをリードする存在になりたい」。創部5年目で初出場した16年は総合17位。当時、入学が決まりテレビ観戦していた伊藤は、自身のユニホーム姿を想像していた。それから2年。箱根路に新たな風を吹かせる。(小又 風花)
◆伊藤 達彦(いとう・たつひこ)1998年3月23日、静岡・浜松市生まれ。19歳。浜松商1年で競技を始め、3年時に5000メートルで高校総体東海大会に出場。試合前の勝負メシは肉汁うどん。好きな歌手はジャスティン・ビーバー。169センチ、50キロ。家族は両親と姉、兄。
◆戦力分析
大志田監督は「カギは往路」と言うようにエースの伊藤、1万メートル28分台の留学生S・スタンレイでスタートダッシュを切る。16年に4区11位とまずまずの成績を残した鈴木博、5区山上り経験者の浜登を並べ、4年生の意地に期待する。復路は山下りに適性を見込んだ河野、菅原らが6区の候補。指揮官は「前回は7、8区がうまくいかなかった」と振り返るが、実業団を経て今年入学した30歳のオールドルーキー・渡辺の存在が支えになる。
初出場の16年は総合17位に終わったが、往路終了時点では12位と健闘した。今年も前半型の高速レースが予想されるため、序盤で勢いに乗り、じっくり粘るレースプランだ。
◆東京国際大 1965年、国際商科大として創立。86年に現校名に。2008年、野球部の監督に元広島の古葉竹識氏(81)を招くなど、複数の運動部を強化。駅伝部は中大OBの横溝三郎総監督(77)、大志田監督の指導体制で11年に創部。選手74人、学生スタッフ10人。大学の主なOBは作家の横山秀夫氏(60)。大学本部は埼玉・川越市。駅伝部の拠点は坂戸市。