【箱根駅伝出場21チーム紹介〈17〉】法大・“失敗しない男”青木涼真が5区

スポーツ報知
ナイター照明の下、2000メートルインターバル走をする法大・青木(右)ら(カメラ・佐々木 清勝)

◆法大 前回8位(3年連続78回目)=出雲途中棄権、全日本10位=

 法大の5区は屈指のインテリランナーが担う。前回8区を走り、理系学部生初の箱根経験者になった青木涼真(2年)は、埼玉の進学校・春日部高出身。「失敗、失速したことがない」安定の走りを約束する。下りの6区は前回58分台をマークし、区間3位になった佐藤敏也(2年)が再び出場。特殊区間に自信を持ち、2年連続のシード権獲得に挑む。

 “失敗しない男”青木が5区に臨む。学校周辺のアップダウンで鍛えられ、上りへの苦手意識はない。「上りが続くと太ももには(ダメージが)くるけど、膝を出してピッチを刻んで、上体を反らさないように」と理想のフォームを理路整然と説明した。

 レースでは失敗知らずだが、陸上を始めたきっかけは小さな失敗だった。埼玉県有数の進学校である春日部高では、中学時代同様にサッカー部へ仮入部するつもりだったが、部室を探しても「場所が分からず」にウロウロするばかり。そんなとき、イケメンの先輩に声をかけられて陸上部に入った。

 入学直後はテストの成績が下位に沈み、打ちのめされた。部活後に2~3時間、仲間と勉強し、通学時間は単語暗記に費やすサイクルに変えると、学年で約360人中30番まで成績が上昇した。生活リズムが整うと、自然と陸上の記録もアップ。1年秋に5000メートル15分53秒だった成績は、2年が終わる頃には14分50秒まで縮んだ。

 進学先は学力と走力の両にらみで探し、先輩の縁で法大を選んだ。理系の生命科学部環境応用化学科に在籍。物理が好きで「粉の成分を変えて圧力を調べる粉じん爆発とか、分子の動きをCGで再現したり…」と実験の日々を楽しんでいる。

 「3、4年で箱根に出られればいいかな」と思っていたが、1年で夢をかなえた。高校時代に大きな駅伝大会を走った経験がなく「沿道の声援が大きくて。ゼロから100を知った」と衝撃を受けた。前回に続き、箱根駅伝好きの祖父・柿沼惣市さんが現地で応援する予定。山を駆け上がり、安定感以上の魅力を発揮する。

(大和田 佳世)

 ◆青木 涼真(あおき・りょうま)1997年6月16日、埼玉・久喜市生まれ。20歳。中学まではサッカー部で、学内駅伝を走る程度。春日部高から本格的に陸上を始め、3年時に全校高校総体3000メートル障害8位。同種目で今年の関東インカレ優勝、日本インカレ4位。大学駅伝は箱根が前回8区9位、今年の出雲は3区4位、全日本は4区11位。167センチ、56キロ。家族は両親と姉。

 ◆6区佐藤

 6区は前回区間3位の佐藤が今回も担う予定。前回は自分でも驚くハイペースで、想定よりも2分近く早く駆け下りた。今回も「58分を切って区間賞を狙いたい」と快走再現を狙う。

 かかとから接地する一般的なフォームと違い、爪先から接地する。何度か矯正を試みたが故障を誘発。3日の福岡国際マラソンで日本歴代5位のタイムを記録した大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)も同じフォームだったことで「下りに向いているし、このままでいい」と開き直れた。

 区間賞への課題は序盤の上りだ。上位とのタイム差が「上りで25秒はついた」と分析。苦手意識を克服するため上る練習を取り入れた。怖いもの知らずだった前回とは違い、注目が集まるが「プレッシャーはある。今回も結果を出せないと意味がない」と自覚している。緊張でレース前夜はよく眠れないこともある。重圧をはねのけた先に“山下りの神”の称号が待っている。

 2、3年生で14人登録 

 前回は4年ぶりにシードを獲得した。3年生8人、2年生6人の若い布陣で、04~06年大会以来の連続シードに挑む。上位10人の1万メートル平均タイムは17位だが、坪田智夫監督(40)は「記録より、いかに練習できているかが大切。前回と同じくミスがなく、100%を出せれば、10位には入れる」と自信を持つ。

 190センチの大型エース・坂東は、全日本駅伝2区で16位から7人を抜いて9位まで押し上げた。他校のエースと戦える力をつけ、今回は2区で勝負する。5区の青木、6区の佐藤が計算できるのは心強い。経験者6人が確実に力を発揮すれば、「7位」という控えめな目標を大きく上回れる。

 ◆佐藤 敏也(さとう・としや)1998年3月11日、愛知・一宮市生まれ。19歳。小学校の頃は野球をやっていたが「学内のマラソン大会で上位だった」ことから中学で本格的に陸上を始める。愛知高2、3年時に都道府県対抗駅伝に出場。大学駅伝は箱根が前回6区3位、今年の全日本は3区2位。167センチ、54キロ。

 ◆法大 1919年創部。箱根駅伝は21年の第2回大会から出場。最高成績は3位(31、43年)。往路、復路ともに優勝1回。出雲駅伝は最高7位。全日本大学駅伝は95、2001年に5位。長距離部員は選手53人、学生スタッフ19人。タスキの色はオレンジに濃紺の縁取り。陸上部の主なOBは01年エドモントン、05年ヘルシンキ世界陸上400メートル障害銅メダルの為末大氏、駿河台大の徳本一善監督ら。

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