【箱根駅伝】東洋大、1年生3人起用で往路V 1区・西山和弥の快走の陰に“乃木坂効果”

スポーツ報知
区間賞の快走を見せた東洋大1区・西山は、鶴見中継所でガッツポーズ(カメラ・相川和寛)

◆報知新聞社後援 第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(2日、東京・読売新聞東京本社前―芦ノ湖、5区間=107.5キロ)

 東洋大はルーキー3人が快走し、5時間28分29秒で4年ぶり6回目の往路優勝を飾った。1区の西山和弥が区間賞を獲得すると4区の吉川洋次、5区の田中龍誠も堂々のデビュー。往路の全5区間でトップを走り続け、4年ぶり5回目の総合優勝に王手をかけた。36秒差の2位は青学大。6位までが前回、青学大がマークした5時間33分45秒の往路記録を更新した。(晴れ、気温6・5度、湿度43%、西南西の風1・6メートル=スタート時)

 99年目を迎えた箱根駅伝で定着している格言を覆した。全10区間が20キロ超の長丁場では「4年生が強いチームが強い」と言われているが、東洋大には当てはまらなかった。過去3年間の往復路全てを制していた青学大、昨年10月の出雲駅伝優勝の東海大、同11月の全日本大学駅伝覇者の神奈川大で「3強」と評価されていた構図を崩した。

 1区の西山は高校時代から活躍したスピードランナー。11、12年に1区2年連続区間賞の大迫傑(26)=ナイキ・オレゴンプロジェクト=に憧れる19歳は17・7キロで先頭に立つと、1区1年生歴代2位の好タイムで区間賞を獲得し勢いづけた。アイドルグループ・乃木坂46の佐藤楓(19)の大ファン。駅伝好きの佐藤は陸上雑誌で注目選手として西山の名を挙げており「あれはうれしかった。この1区も佐藤さんが見てくれていると思って頑張れた」と照れ笑いした。

 大舞台を前に重圧に襲われていたが、元日のニューイヤー駅伝が変えた。高校時代のライバルで大学を経由せず住友電工に入社した遠藤日向が1区で区間賞を獲得。酒井俊幸監督(41)の「箱根駅伝でビビっている場合じゃないぞ」というゲキでスイッチが入った。「トラックでもマラソンでも世界を目指したいと思っているので、ここで区間賞を取れて良かった」

 4区の吉川は全日本で最長(19・7キロ)の最終8区を志願し、区間4位と好走した。この日も終盤にダラダラと上る難コースで区間新の1時間2分22秒を出し「小さいころからの夢の舞台に集中して臨めた」。5区の田中は1万メートル自己ベストが30分14秒13と高校生レベルだが箱根山中で区間9位と粘り、往路優勝のゴールテープを切った。「先輩と同期がいい流れでタスキを持ってきてくれたので自信を持って走れた」

 登録メンバー16人中6人が1年生。前回9区区間賞の野村峻哉(4年)らの調子が上がらず、4年生は小早川健だけ。だが指揮官は「前回のエントリーメンバーが外れたことは監督として反省している。ただ非情と言われても、それが次の選手をつくる」と迷いはない。1年生の潜在能力を信じた采配の勝利だった。

 1年生3人を擁した往路制覇は2000年の駒大以来18年ぶり。駒大はそれ以降の9大会で優勝6回と黄金期を築いた。「黄金世代」と呼ばれながらもろさを見せる東海大の2年生に対し、東洋大の1年生は既に“いぶし銀”の雰囲気を漂わせる。登録16人中上位10人の1万メートル平均タイムは青学大の28分52秒3(2位)に対し29分8秒36で6位。チームスローガン「その1秒をけずりだせ」を体現したルーキーは、駅伝では「速さ」より「強さ」が求められることを証明した。(竹内 達朗)

 ◆東洋大は最若V 往路優勝チームで全員の学年が記録で残っている1985年(第61回)以降、1年生が3人以上いたのは2000年(第76回)の駒大以来2度目。区間賞はゼロながら1区・島村清孝、3区・布施知進、5区・松下龍治の1年生トリオが快走。復路も制し初優勝した。駒大は1年―2年―1年―4年―1年で5人の学年の和が9だが、東洋大は1、2、3、1、1で8と“最若”。

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