【箱根駅伝】実は「0区」がある 年末に行われる登録外メンバーの記録会にドラマがある

スポーツ報知
8区、下田(左)にペットボトルを渡す給水員の石川

◆報知新聞社後援 第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(3日、芦ノ湖―東京・読売新聞東京本社前、5区間=109.6キロ)

 1~10区で争われる箱根駅伝に、実は「0区」がある。

 大会が直前に迫った年の瀬、多くのチームで登録メンバー(16人)から外れた選手による記録会が行われる。ここでトップを取った選手は翌年度にブレイクして、メンバー入りすることが多い。もっとも、それは1~3年生に限る話。メンバーから外れ、箱根駅伝を走るチャンスがゼロの4年生は集中力が保てず、凡走する選手が多い。しかし中には、この競技人生最後の非公式レースで自己ベスト以上の走りを見せる強者もいる。

 青学大は昨年12月26日に相模原市のキャンパス内陸上競技場で登録メンバー以外の選手が1万メートル学内記録会を行い、石川優作(4年)が自己ベストに迫る29分47秒9でトップを取った。中堅校であれば箱根駅伝に出場できるレベル。レースを見守った登録メンバーは大声で応援を続けた。下田は4年間、苦楽を共にした同期の力走に「強い気持ちを見せてもらった」と引き締まった表情を見せた。

 石川はこの日、8区の10キロ地点で下田の給水員となり、文字通り“力水”を手渡した。給水員が選手と並走できるのは大会要項で50メートル以内と定められている。その短い距離と時間では一言しか言葉は交わせないが、思いは通じる。

 「最後だ。頑張れ!」

 「ありがとう!」

 強いチームはメンバーから外れた選手も強く、箱根駅伝を走る10人を後押しする。登録外メンバーの記録会が、箱根駅伝の「0区」と呼ばれるゆえんだ。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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