【東京マラソン】設楽悠太、16年ぶり日本記録で1億円ゲット

スポーツ報知
東京駅を背に、日本勢最高の2位でゴールする設楽悠太(代表撮影)

 さあ、次は東京だ! 2020年東京五輪のマラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」出場を懸けた男子は、設楽悠太(26)=ホンダ=が16年ぶりに日本記録(2時間6分16秒)を5秒更新する2時間6分11秒で日本人トップの2位に入り出場権を獲得。日本陸上界で初めてハーフ、フル両マラソンの日本記録保持者となった。冬季最多メダルを更新した平昌五輪日本勢の勢いを引き継ぐように、東京五輪でメダルの期待が膨らむ快走だった。(曇り、気温6・5度、湿度36%=スタート時)

 ゴールテープを切った瞬間、目の前が真っ白になった。日本新を確信し、ガッツポーズしながら飛び込んだゴールで、設楽は「初めて」倒れ込んだ。「今の限界を出し切れた。課題も反省もない」。16年ぶりの大記録で更新ボーナス1億円をゲット、観衆にこぶしを突き上げて応えた。

 30キロまでは「後半のことを考えずに、いいペースに乗って」と先頭集団。だが、日本記録から24秒遅れで通過すると、海外勢のペースアップに反応できず。遠ざかる井上大仁(25)=MHPS=の背中に「正直厳しいかな」といったん大きく後退した。

 練習でも「僕には必要ない。30キロ以降は気持ち」と40キロ走は行わず、毎週のようにレースに出場する“川内優輝スタイル”を貫いた。年明けから2度の駅伝を含む4大会に出場。しかし、初マラソンだった昨年大会も前半飛ばし、後半失速したように、再び30キロの壁が立ちはだかった。

 だが、今年は違った。「悠太、頑張れ!」。31キロ地点で双子の兄・啓太(日立物流)が、32キロ地点では父・享史さん(55)、母・悦子さん(55)、姉・千尋さん(28)、東洋大の恩師・酒井俊幸監督(41)が声をからして応援。「声で分かりました。一番力になった」

 クールな26歳だが、実は「みなさんの応援に応えたい。特に両親」という感謝の心の持ち主。折り返しを経て、再び家族が見守る39キロ地点の前でリオ五輪銀メダルのリレサ(エチオピア)と井上を逆転。最後は40キロで取った給水ドリンクについていた姉の激励イラストを右腕につけ、2位でゴールに駆け込んだ。

 啓太とともに箱根駅伝では東洋大のエースとして活躍。所属するホンダの小川智コーチ(39)も「規格外、ですね」と話すように、斬新な考え方と積極果敢な走りで16年手つかずだった歴史を塗り替えた。アフリカ勢は2時間2~3分台を連発しているが、真夏に行われる20年東京五輪では勝機もある。「暑さにも強く、夏のマラソンで世界と勝負できる」と東洋大・酒井監督は期待する。

 24日には平昌五輪女子マススタートの高木菜那(25)の金メダルをテレビ観戦。「金メダル2個はすごい。自分もあんなふうに世界と戦いたい」と刺激を受け、レースに臨んだ。20年東京五輪の男子マラソンは8月9日。「(今後も)みなさんが思っている以上のタイムは出せる」。炎天下の42・195キロへ、設楽はマイペースなハイペースを刻む。(太田 涼)

 ◆設楽 悠太(したら・ゆうた)1991年12月18日、埼玉・寄居町生まれ。26歳。双子の兄・啓太とともに男衾(おぶすま)小5年から陸上を始める。2010年、武蔵越生高から東洋大経済学部に進学。箱根駅伝では1年時に3区8位、2年時7区区間賞、3、4年時3区区間賞を獲得。170センチ、48キロ。家族は両親と姉、兄。

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