小川雄勢、リオ銀・原沢を撃破し初V「一番強いんだと証明できて良かった」

スポーツ報知
世界選手権代表と今大会の結果

◆世界柔道選手権代表選考会兼 全日本選抜体重別選手権最終日(8日、福岡国際センター)

 男子4階級と女子3階級が行われ、男子100キロ超級は、元世界王者で92年バルセロナ五輪銀メダルの小川直也氏(50)の長男、雄勢(21)=明大=が初優勝した。決勝でリオ五輪銀の原沢久喜(25)=日本中央競馬会=を破った。女子52キロ級は角田夏実(25)が決勝で志々目愛(24)=ともに了徳寺学園職=に勝利。昨年の世界選手権決勝の雪辱を果たした。全日本柔道連盟(全柔連)は大会後の強化委員会で今夏の世界選手権(アゼルバイジャン)の男女代表6人ずつを決定した。

 小川は気力を振り絞り、最後まで攻め続けた。ゴールデンスコア方式の延長にもつれ込んだリオ五輪銀の原沢との決勝。体力は限界に近付いていたが「僕は挑戦者。前に出るんだ」と積極的に技を繰り出し、昨年は1回戦で敗れた相手に3つ目の指導が与えられた。反則勝ちで雪辱し、「この階級で一番強いんだと証明できて良かった。少しは昨年の自分を超えることができたかな」と胸を張った。

 屈辱にまみれた1年が小川を変えた。高校時代に日本一を何度も経験し、元世界王者の父・直也氏と同じ明大に進学した。一昨年の全日本体重別選手権で3位に入るなど、シニアでも結果を残し始めた時期に芽生えたのは「俺は強いんだ」という過信。心に隙が生まれ、相手の技への対応でも後手を踏むようになった。

 昨年はこの大会で初戦、全日本選手権は3回戦で敗れた。学生の大会でも負け始め「このままでは東京五輪とか言ってられない」と危機感を抱いた。父からも「もう一回、一からやらなきゃダメなんじゃないか」と叱咤(しった)され、試合の組み立てや戦術を考えるようになった。11月の講道館杯を制し、グランドスラム東京ではリオ五輪100キロ級金メダルのルカシュ・クルパレク(チェコ)を撃破して優勝。世界選手権の代表争いに一気に名乗りを上げた。

 100キロ超級の代表は29日の全日本選手権後に決まるが、準決勝では17年世界選手権代表の王子谷剛志(25)=旭化成=も延長で下したことも小川のアピール材料だ。投げ技でポイントを取れない課題は残ったものの、会場で観戦した父・直也氏は「俺の中ではもっと強くなってくれるイメージがある。戦術プラス技の強化ができれば鬼に金棒になる」と期待。潜在能力を開花させ始めた21歳は「負けに負けた1年があったから頑張れている。目標はあくまで世界一。そこはずらさない」と初の大舞台を見据えた。(林 直史)

 ◆小川 雄勢(おがわ・ゆうせい)1996年7月20日、横浜市生まれ。21歳。10歳から父の道場で柔道を始める。修徳高を経て15年明大進学。同年世界ジュニア3位、16年グランプリ青島大会優勝。17年講道館杯、グランドスラム東京優勝。左組み。得意技は払い腰。190センチ、136キロ。

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