20年東京五輪でドローン中継導入を検討へ…「都市型スポーツ」大会で稼働

スポーツ報知
さまざまな場面で活躍するドローン

 2020年東京五輪では、自転車競技のBMXやスケートボードなど、跳躍するトリッキーな動きが見どころとなるスポーツが追加種目として採用される。そこで本領を発揮しそうなのが小型無人機・ドローンだ。都市型(アーバン)スポーツと呼ばれるこれらの種目の日本初となる国際大会(FISE=エクストリーム・スポーツ国際フェスティバル)が6日から3日間、広島市で行われ、ドローンがフル稼働。関係者からは東京五輪での導入を求める声が上がった。

 ヒップホップの爆音に、ノリノリのDJ。競技会場には一部の特設席を除いて座席はなく、観衆は全員総立ちで音楽やムードに合わせて声援を送る。試合というよりも野外ライブそのものだ。そして、空中ではドローンが飛行し、トリッキーな大技を追っている。海外約50か国に配信された。臨場感あふれるライブ中継は、会場内に設置される大型モニターで見ることができた。

 1997年にフランス・モンペリエに創設されたFISEは都市型スポーツの国際大会をこれまで25か国以上で350回以上開催。日本初開催となった今大会には250人の選手が25か国から参加。観戦スタイルや運営、中継方法など参考になるのではと、東京五輪パラリンピック組織委の関係者も視察に訪れていた。

 今回のイベントで最も注目されたのはドローン。東京五輪に向けて、都市型スポーツの普及のために設立された日本アーバンスポーツ支援協議会の会長で、国際体操連盟会長の渡辺守成氏(59)は「空撮だからこそ、プレーや、観客が沸いている様子が伝えられる。ぜひ東京五輪でも活用を検討していくべきでしょう」と力説した。

 BMXの東京五輪強化指定選手の中村輪夢(りむ、16)はトリッキーな跳躍で観衆を沸かせ、決勝進出を決めた後には「日本の方の声援でテンションが上がってやってやろうという気持ちになった。楽しい時はいい演技ができる。お客さんも一緒に楽しめればいいなと思います」と話した。

 FISEの主催者は「ドローンはスピードが速く、小回りも利き、カメラが安定していて高画質であることからトリッキーな動きが多いBMXやスケートボードなどには最適なんです」と説明する。渡辺氏は「クレーンを使用するような経費はかからず、コストパフォーマンスがいいのが魅力です」と話すが、ドローンが抱える問題点もある。

 平昌冬季五輪の開会式ではスタジアムの上空を飛び、五輪マークや大会マスコットのスホランをかたどった1218台のドローンが話題になった。スノーボードなどの中継で使用が検討されたが、観客らへの落下の恐れを考慮して飛行は禁止された。プロ野球のキャンプや、Jリーグのハーフタイムでも導入されているが、安全性の観点から試合中には飛ばしていない。

 渡辺氏は「今後、機体の性能が上がっていけば2020年には使用が当たり前になっているかもしれません。五輪を盛り上げる一要素になるなら参考にしてほしい」と期待する。

 東京五輪で採用される「都市型スポーツ」は、中継スタイルでも新しい風を吹き込むことになるかもしれない。(甲斐 毅彦)

 ◆進化するスポーツ中継技術

 ▼リアルタイム化 主に競泳の中継などで用いられるが、世界記録のラインや着順の選手名が水面上にすぐに合成されるように。画像解析技術を用いたCG合成がプレーと並行して行われており、野球中継のピッチャーの球種・球筋、ゴルフでの芝の方向、カーリングのストーンの軌道などがすぐに分かるようになった。

 ▼ぐるっとビジョン NHKは多視点ロボットカメラのシステムを用いて、複数のカメラが連動して被写体を撮影できる技術を開発。撮影対象の周囲を360度取り囲むような映像表現が可能になった。体操やフィギュアなど、演技の細部まで見たい競技のリプレーシーンなどで主に使われる。

 ▼VR 現在まだ開発中だが、専用のゴーグルを通して視聴すれば、自分がスタジアムやコートに立ち、選手と同じ目線で観戦できる。ここ数年で飛躍的な発展を遂げており、日本の技術チームも東京五輪・パラリンピックに照準を定めている。

 ◆東京五輪で実施される新競技など

 〈新競技〉

 ▼スケートボード 街中にあるような階段や斜面、手すりを模したコースを使う「ストリート」、窪地(くぼち)状のコースで行う「パーク」を行う

 ▼スポーツクライミング 「ボルダリング」「リード」「スピード」の複合で競われる

 ▼空手 組手(3階級)、形を男女別の計8種目

 ▼サーフィン ショートボードの男女2種目

 〈主な追加種目〉

 ▼BMX(フリースタイル・パーク) 技を披露し、難易度・独創性を競う

 ▼バスケットボール3人制 5人制の半分のコートで行う

 〈復活〉

 ▼野球(男子)・ソフトボール(女子) 各6チームが出場予定

 ◆ドローン 広義には、無人航空機全般を指す。玩具に近い小型・低価格のものから、災害監視や軍用として使われる小型飛行機に近いものまである。2010年頃から普及。現在は報道番組などの映像取材で使用されている。米国のアマゾンでは書籍の宅配への活用も計画。産業用途での活用範囲を広げるためには、機体の安全性の基準、気象条件の制限、飛行経路の指示などの規則を整備することやプライバシーの侵害への対策の必要性が指摘されている。

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