市民ランナーが世界最強!川内優輝、日本勢31年ぶりのボストンマラソンV

スポーツ報知

◆第122回ボストン・マラソン(16日・米マサチューセッツ州ボストン)

 男子は、公務員ランナー川内優輝(31)=埼玉県庁=が2時間15分58秒で初優勝を飾った。日本勢では1987年大会の瀬古利彦以来31年ぶり8人目、9度目の快挙。世界最高峰シリーズ「ワールド・マラソン・メジャーズ」で日本勢初制覇となった。大雨、強風、スタート時の気温3・3度の悪条件。40キロ過ぎに、トップだった17年ロンドン世界陸上王者で前回覇者のジョフリー・キルイ(ケニア)をかわした。姉妹提携する青梅マラソン(報知新聞社主催)から派遣された男子の岡本直己(33)=中国電力=は17キロ手前で、女子の芦麻生(あし・まき、24)=九電工=は20キロ過ぎでいずれも棄権した。

 優勝は大歓声で知った。くしゃくしゃにゆがんだ川内の顔が、一気に驚きに変わった。「陸上を26年やってきて一番幸せな日」。雨に打たれ、風に吹かれても、必死の形相で前を追った。先頭を走っている自覚はなかった。「表彰式で国旗が揚がったのを見て感動した。瀬古さんが最後に優勝した年に僕が生まれたので運命を感じる」と涙をこらえた。公務員ランナーが海外エリートを倒し、122回目の伝統大会に「君が代」を流す痛快な下克上が完成した。

 季節外れの寒波に襲われ、スタート時は気温3・3度。冷たい風が加わり、体感は0度を下回った。開催すら危ぶまれる悪条件に「最高のコンディション」と燃えた。「速さより強さ」を示す絶好機。「スローだと誰が勝つか分からない。早い段階で集団を絞りたかった」とスタート直後の急な下りで独走した。度肝を抜く仕掛け。25キロ付近で世陸王者のキルイがスパートをかけたが、逃さずに追走。終盤の「心臓破りの丘」といわれる坂も乗り切り、35キロでは1分31秒差に開いたキルイを40キロ過ぎで逆転。42年ぶりに2時間15分超えとなった過酷なレースで、今回が81回目のフルマラソン経験を生かし「マラソンは何が起こるか分からないと証明できた。僕が勝つと思っていた人は1人もいなかったと思う」と照れ笑いした。

 今年1月1日、川内の18年はボストン郊外での「ニューイヤーズデイ・マラソン」から始まった。後半に起伏があるボストンのコースを下見し、勝負所を探る狙いもあった。同大会は氷点下17度、8~10メートルの強風が吹く極寒の中を2時間18分59秒で完走。「何でこんな所を走っているんだろう」と苦笑いを浮かべたが、図らずも悪天候の“予習”になった。

 2月の東京マラソンでは、設楽悠太(26)=ホンダ=が16年ぶりに日本記録を更新。自身は代表引退を宣言しており、「この優勝で盛り上がると思う。いろいろな選手が海外に挑戦するようになると思うし、刺激になれば」と後進へ期待した。一番の趣味は旅行で、世界6大陸全てでマラソンを走破するのが夢。世界をまたにかけ、最強を追求する川内の挑戦は続く。

 ◆ボストン・マラソン 1897年創設。米独立戦争が開戦した「愛国者の日」に第1回が開催されたことから、現在も「愛国者の日」にあたる4月の第3月曜日に開かれるのが通例。国際陸連が求める条件を満たさない片道コースのため、公認記録とはならない。06年からは、世界最高峰シリーズの「ワールド・マラソン・メジャーズ」(WMM)の1つに。有力選手が集まるWMMはボストンの他、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティー、13年からは東京も加わり、世界6大マラソンと称される。

 ◆ボストン・マラソンの賞金 優勝者は15万ドル(日本円で約1605万円)。世界最高額クラスのドバイ・マラソン(20万ドル=日本円で約2140万円)に次いで高額の賞金が出るため、アフリカ勢を中心に一獲千金を狙う有力選手が集まりやすい。国内では、優勝者に1100万円が贈られる東京マラソンが高額レースとして知られる。

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