川内優輝、来年4月プロ転向「マラソンに人生かける」ボストンV賞金で公務員“卒業”

スポーツ報知
ボストン・マラソンで初優勝を飾った川内優輝は、帰国して金メダルを披露(カメラ・池内 雅彦)

 16日のボストン・マラソンで日本勢31年ぶりの優勝を果たした川内優輝(31)=埼玉県庁=が19日、成田空港に帰国し、来年4月1日からプロランナーに転向すると明かした。昨年に日本代表からの引退を宣言した後も数々のレースに出場し、20年東京五輪代表選考レースのMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権も持つ公務員ランナー。ボストンでの優勝賞金約1600万円を資金に、日本代表復帰に関しても「十分あり得る」と話した。

 「BOSTON」と書かれたTシャツにジャケット姿で帰国した川内は、少しこわばった表情で明かした。「(埼玉県庁を)退職して来年4月からプロランナーになるので、賞金(約1600万円)はその資金になれば。3年か4年は活動できる。金銭面の不安がなくなったのは一番大きい」。突然のプロランナー転向と公務員“卒業”宣言だ。

 久喜高校定時制に勤める川内の日々は多忙だ。平日は朝と勤務後にトレーニングを行い、空き時間に体のケア。休日に各地のレースに参戦して地力をつけるスタイルを約9年間続けてきた。高地での長期合宿も「公務員をしているうちはなかなかできなかった」。今回も空港から久喜高に直行して仕事をこなしたが、プロになれば競技に専念できる。年収約500万円(推定)の安定感よりも環境の向上を選んだ。

 川内家の次男・鮮輝(よしき、27)=J―bird=はプロランナーで、昨年12月の福岡国際で自己記録を4分以上更新。自身は13年ソウル国際での2時間8分14秒を超えられないままだ。三男・鴻輝さん(25)は15年に株式会社K・Kスポーツを設立。スポーツマネジメントを手がけ、現在は久喜市議選に出馬している。「自分もマラソンに人生をかけないといけない」と刺激を受けた。

 プロ活動ではスポンサーの獲得やマネジメント会社は欠かせないが「こちらから募ることはしない。もし助けてくださるところがあれば」と来るもの拒まずの構え。圧倒的な知名度と老若男女問わない人気の高さにオファーは続々と届きそうだが、決して金が目的ではない。「賞金が底をつけばどんな仕事にでも就く」と言い切った。

 成田空港では「暑さに弱いことも自覚している。(東京五輪で)戦える自信が今はない」と出場権を持つMGCレースへは消極的だったが、久喜高で行われた2度目の会見では代表復帰について「十分あり得る」と、東京五輪への挑戦に前向きな姿勢も見せた。次戦は22日のぎふ清流ハーフマラソン。ボストンVにより世界中からレースへの招待が届き始めている男から、目が離せない。

(太田 涼)

 〇…埼玉県庁教育課の担当者は「(プロ転向は)ネットで見て知りました。今後どうするのかな、と気になっていただけにビックリ」と驚きを隠せなかった。久喜高は来年が創立100周年で、川内は式典や準備を今年度内に終え退職する予定。担当者は「これまでもこれからも、川内選手の頑張る姿を応援します」と後押しした。

 ◆プロとアマチュアランナーの違い 実業団に所属している設楽やアマは所属会社からのサポートを受けており、プロは個人的にスポンサーを募って活動。米国に拠点を置く大迫傑(26)=ナイキ・オレゴンプロジェクト=はナイキ社をはじめ、デルタ航空や明治などが個人スポンサー。12年ロンドン五輪代表の藤原新(36)や早大の学生駅伝3冠に貢献した八木勇樹(28)らは個人事務所を設立しスポンサーを募っている。公務員は賞金は受け取れるが、招待選手としての出場料はなし。関係者によると出場料は世界大会メダリストクラスで最大約100万円。川内はそれに近い額とみられる。

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