飯塚、リズムで男子200メートル2年ぶり3度目V!後半で一気に

スポーツ報知
男子200メートル決勝で優勝した飯塚(手前、奥は4位の桐生=カメラ・渡辺 了文)

◆ジャカルタ・アジア大会選考会・陸上日本選手権最終日(24日、山口・維新みらいふスタジアム)

 男子200メートル決勝で、2016年リオ五輪400メートルリレー銀メダルの飯塚翔太(27)=ミズノ=が20秒34で2年ぶり3度目の優勝を果たし、8月のジャカルタ・アジア大会代表に内定した。2位の小池祐貴(23)=ANA=も残り1枠の代表確実。100メートル日本記録保持者の桐生祥秀(22)=日本生命=は4位で、個人での代表入りは絶望的となった。

 飯塚の20秒間だった。「100メートルの選手(桐生)もいて、スピード感があるレースで刺激になった。前半で飛ばしすぎず、直線でしっかりかわせた」。前半はペースを抑え、後半の直線部で一気に突き抜けた。左手を軽く上げ、声援に応える。「ライバルにも感謝している。これでアジア(大会)で勝負し、世界と戦うスタートラインに立てた」と、貫禄を漂わせた。

 決勝当日の朝、飯塚はホテルのベッドに寝て天井を眺めていた。傍らのスマートフォンから、メトロノームの音が響いている。レース時の脚の運びと同じ、毎分240回のリズムだ。右脚、左脚。腕も振って、前へ前へ―。5分ほどリラックスしながら聞き入った。「(足の)接地を長めにして、楽に力を発揮できるタイミングを意識した」。今大会から取り入れたイメージトレーニングで、完勝へ準備を整えた。

 今年2月は、斬新な試みに打って出た。標高1900メートルのメキシコ・ケレタロで約2週間の高地合宿を敢行した。長距離では心肺機能と持久力を高めるため一般的な高地合宿。短距離でも、低地より気圧が低くタイムが出やすいため、より高水準のスピードを体感できるメリットがある。「高地合宿は、やって良かった。(脚を上げるのに使う)腸腰筋が合宿後に痛くなったから、負荷もかかっていると(手応えを)感じていた」。明確な狙いに基づいた努力が、成長を後押しした。

 食にもこだわりがあふれている。袋入りのナッツや豆類を常に携帯し、練習や試合後にポリポリと食べる。疲労回復効果があるビタミン群を、速やかに取るためだ。肉は低脂肪、高タンパクの馬肉を熊本県から取り寄せる。米は玄米。「『体がおいしいと思う物を食べる』のがモットー」。2015年に右太もも肉離れで長期離脱した反省もある。体の充実が、好成績を支えている。

 2年ぶりに日本一を奪回し、目は海外に向いている。7月は欧州遠征を行い、スピード強化のため100メートルにも挑戦する方針だ。「アジア大会は個人(200メートル)とリレーで金メダルを目指したい」。上り調子だから、目標も大風呂敷ではない。飯塚の存在感は、今季も揺らがない。(細野 友司)

 ◆桐生アジア大会個人では絶望的

 4位に終わった桐生は、「勝負弱いと言われても仕方ない結果だが、自分の走りはできた」と淡々。本職の100メートルに加え、今季から本格的に“二刀流”に取り組んでいるが、「両立は難しいけど、どちらのかけっこもチャンピオンが理想」と、挑戦を続けるつもりだ。個人種目でのアジア大会出場は絶望的だが、4×100メートルリレーでの選出の可能性は残る。「状態は良い。ここが自分の最高点じゃなかっただけ」と、前を向いた。

 ◆飯塚 翔太(いいづか・しょうた)1991年6月25日、静岡・御前崎市生まれ。27歳。小学3年から競技を始める。藤枝明誠高から中大。2012年ロンドン五輪代表。14年ミズノ入社。男子400メートルリレーで16年リオ五輪銀、17年ロンドン世界陸上銅。自己記録は100メートルで10秒08、200メートルは20秒11。186センチ、80キロ。

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