栃ノ心優勝に草津温泉でちゃんこ店営む元春日野部屋力士大喜び「これで前を向いて頑張れる」

スポーツ報知
初優勝を決めた栃ノ心

 大相撲の平幕では6年ぶり、春日野部屋では46年ぶりに優勝を果たした前頭3枚目・栃ノ心(30)に、群馬・草津温泉街でちゃんこ店「大茶庵」を営む元春日野部屋力士の大塚隆次さん(56)が喜びのメッセージを寄せた。草津ではこの日、23日に草津白根山が噴火して以降初めての週末を迎えた。キャンセルが相次ぐなど観光業にも影響が出ているが、大塚さんは「これで前を向いて頑張れる」と希望の言葉を口にした。

 噴火から初の週末を迎えた27日。草津温泉街にあるちゃんこ店の大将・大塚さんにとって、栃ノ心優勝は待ちに待った瞬間だった。「彼とは話したことはないですが、同じ部屋の後輩で気にはかけていた」と大塚さん。「うれしくて仕方がないですよ。46年ですよ、46年!」と春日野部屋からおよそ半世紀ぶりに出た優勝力士を祝った。

 大塚さんはかつて「忍錦」(しのぶにしき)のしこ名で活躍。最高位は幕下で、83年に引退した。東京でちゃんこ店を開店し、数年前に故郷の草津へ移転。今の店舗は春日野親方や八角理事長らも来店したことがあるという。「春日野親方とは、部屋から優勝力士を出したいという話もしたことはある」。部屋OBからすると、今回の優勝は悲願中の悲願だった。

 喜びは、後輩だからというだけではない。草津では、23日に本白根山が噴火。草津温泉旅館協同組合によると翌24日の段階で宿泊キャンセルが延べ1万4133人、被害額は2億円に上るという。大塚さんは「今はまだ実感はないけど、客足が回復するかはこれからの状況によると思いますよ」と心配顔。「だからこそ、栃ノ心の優勝は前に進んで頑張ろうという気持ちになりましたよね」と話す。

 実際、草津温泉街では噴火の影響はなく、噴火自体も「テレビのニュースで知ってビックリした」(土産物屋の40代女性店主)ほど。同組合の関係者は「泉質が変わったわけでもないんですよ。メディアの方々や個人のSNSとかで、大丈夫だということをアピールしていただくしか手はない」と訴えた。

 この日は猛吹雪で最低気温はマイナス14度だったが、「湯畑」を中心に多くの観光客の姿があった。前出の関係者は「先日は『キャンセルが多いと聞いたけど、2月の3連休(10~12日)で空いている日はないの?』と聞いてくる方がいて。こうやって来ようとしていただけるだけでもうれしいですよね」。草津温泉も、必ず逆境をはね返すはずだ。

 ◆草津温泉 群馬県吾妻郡にあり、下呂(岐阜)、有馬(兵庫)と並び「日本三大名泉」と呼ばれることもある温泉地。自然湧出量は日本一の毎分3万2300リットル以上、また日本有数の酸性度を誇る。室町時代以降は入湯の記録が残っており、豊臣秀吉が徳川家康に湯治を勧めたとされている。温泉の沈殿物である「湯花」の採集などを行う「湯畑」や「湯もみ」が有名。各旅館の温泉のほか、19か所の無料共同浴場がある。

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