激震の初場所は栃ノ心が初優勝「力士になってよかった」春日野部屋に46年ぶり賜杯

2018年1月28日6時0分  スポーツ報知
  • 栃ノ心は松鳳山を寄り切りで下し初優勝。土俵下で万感の表情を見せる(カメラ・堺 恒志)

 ◆大相撲初場所14日目 ○栃ノ心(寄り切り)松鳳山●(27日・両国国技館)

 前頭3枚目・栃ノ心(30)=春日野=が初優勝を飾った。前頭9枚目・松鳳山(33)=二所ノ関=を寄り切って13勝目。2差で追う横綱・鶴竜(32)=井筒=と大関・高安(27)=田子ノ浦=の3敗対決を待たずに初の賜杯を決めた。ジョージア出身力士の優勝は初。2012年夏場所の旭天鵬(現友綱親方)以来、14日目では01年秋場所の琴光喜以来の平幕Vの快挙に八角理事長(元横綱・北勝海)は大関候補の誕生を明言した。

 鬼の形相が、みるみるうちに笑顔へと変わった。初優勝に王手をかけていた栃ノ心が、松鳳山を寄り切って自己最多13勝目。結びまで8番を残して早々と17年ぶりの平幕14日目Vを決めた。米俳優ニコラス・ケイジ似のイケメンは花道で目元を拭うしぐさ。「最高ですねぇ。うれし涙じゃないですか」と照れ笑いした。昨年九州場所の元横綱・日馬富士関の暴行問題から角界は揺れ、再出発の今場所も白鵬、稀勢の里の2横綱が途中休場。波乱含みの土俵の主役は無印の前頭3枚目がつかんだ。

 入門から12年。その歓喜の余韻に浸る間もなく国技館を出た。春日野部屋まで徒歩数分の道のり。待っていたのは大勢のファンだった。千秋楽を前に夜道で始まった即席Vパレード。もみくちゃにされても、前に進めなくても「大けがから戻ってくるのは簡単じゃなかった。みんなのおかげ。幸せ」。何度も立ち止まり“神対応”の握手で応えた。

 苦難の道を乗り越えた。13年名古屋場所で右膝前十字及び内側側副靱帯(じんたい)を断裂。すぐに入院して再建手術も必要だったが患部の腫れが引くまで約3週間も待った。3場所連続の全休。退院後は右膝を気遣って体重を30キロ近く落とした。毎日2時間、砂浜を歩き筋力維持に取り組んだ。「力が戻るまで1年近くかかった。リハビリをやり過ぎてまた腫れたり。気持ちも体も落ちて(相撲を)やめようかとも思った」。沈んだ顔を見つけては師匠・春日野親方(元関脇・栃乃和歌)が「引退を考えているのか? バカ野郎。あと10年は相撲を取らなきゃダメだ」と背中を押した。幕下転落危機に直面して強行出場を泣いて直訴しても師匠は完治を優先させた。

 三役経験後、幕下に落ちてからのカムバック優勝は81年秋場所の琴風(元大関、現尾車親方)以来。努力を積み重ねてのV字復活は今後、けがに苦しむ後輩力士の道しるべにもなる。

 春日野部屋にとっては72年初場所の初代栃東以来46年ぶりの賜杯。大関昇進への道も見え始めた。八角理事長は「今後、十分にある」と明言。「人生でも忘れられない日になった。力士になってよかった。明日も(取組が)あるし、まだ(酒は)飲まないよ」。祝杯だけは最後まで取っておく。(小沼 春彦)

 ◆栃ノ心に聞く

 ―入門12年目での初優勝。

 「まだ自分でも信じられない。いつか優勝したいとは思っていたけど、本当にこういう日が来るとは。頭の中が真っ白」

 ―松鳳山に勝って優勝を迎えた瞬間をどう感じたか。

 「やったあとは思ったけど相手もいることだからね。気持ちは抑えた」

 ―今場所いつから初賜杯を意識したか。

 「(10勝目を挙げた)11日目。考えると緊張しちゃうタイプだから考えないようにしたよ」

 ―母国・ジョージアの家族も喜んでいるか。

「向こうも盛り上がっている。父、母、家族、親戚、みなさんにありがとう。今日は最高の日です」

 ―千秋楽は。

「勝って終わりたいね」

 ◆栃ノ心 剛史(とちのしん・つよし)本名レバニ・ゴルカゼ。1987年10月13日、ジョージア・ムツヘタ出身。30歳。少年時代は柔道、サンボを経験。2006年春に初土俵。08年夏に新入幕。最高位は関脇(16年名古屋)。得意は右四つ、つり出し。家族はニノ夫人と昨年11月に誕生した長女・アナスタシアちゃん。趣味は料理。母国と同じ銘柄の缶コーヒー「ジョージア」を愛飲。

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