貴乃花親方、協会を内閣府に告発 暴行問題調査と理事解任「重大な疑義」

スポーツ報知
朝稽古を終え、記者の質問に答える貴乃花親方(カメラ・渡辺 了文)

 大相撲の貴乃花親方(45)=元横綱=が9日、部屋の公式ホームページ(HP)を更新し、弟子の十両・貴ノ岩(28)=貴乃花=が元横綱・日馬富士関(33)から暴行被害を受けた問題で、日本相撲協会の対応に問題があったとして内閣府に告発状を提出したことを公表した。協会の調査を「公正中立とは到底言えない」、自身の理事解任を「正当な理由のない行為」などと批判し、立ち入り検査を求めた。

 春場所初日を2日後に控えた夜、貴乃花親方が捨て身の告発を敢行した。部屋の公式HPによると、協会危機管理委員会による調査を第三者によって行われたものではないとし、「被害者の主張を聞く前に中間報告要旨を公表し、その後の最終報告においても重要な点で被害者の主張が全く反映されておりません」と指摘。「公正中立な内容とは到底評価できない」と批判した。

 今年1月に受けた理事解任処分についても「法的には、解任事由に相当するような理事の職務義務違反になると認めることは困難」と主張。処分を決めた評議員会に対し「私が求めた弁明の機会を与えずに、理事の解任という重大行為に及んでいます」と記した。その上で相撲協会が公益財団法人として適切な運営に支障を来すとして、監督機関である内閣府の公益認定等委員会に立ち入り検査や適切な是正措置を求めた。

 協会側は危機管理委員会が貴乃花親方を含む関係者に聴取を行い、処分を決定。また、事件対応を受け、巡業部長として協会への報告義務を怠り、弟子の貴ノ岩への聞き取りを師匠の立場で何度も拒んだ「忠実義務に反する」などの理由で評議員会から理事解任処分を受け、2階級降格の役員待遇委員に降格した。

 貴乃花親方は2月に一連の事件への見解に関して、テレビ朝日の番組などで、危機管理委員会の発表とは見解が異なる部分があるなどと話していた。これに対し、同委員会の高野利雄委員長は9日、「彼には2回、2時間にわたって話を聞いている。一方的なことはあり得ない」と反論していた。

 貴乃花親方は解任後、2月2日の理事候補選挙で落選。この日は任期中で最後の定例理事会だったが欠席し、2月以降は全協会員対象の研修会にも姿を現していない。そうしたなかでの告発状提出。協会関係者は、暴行問題の件も内閣府に了承を得ながら対応を進めていると強調した上で「初日の直前で、しかも弟子の貴ノ岩が復帰するタイミングに…」と困惑していた。

 ◆貴乃花親方が表明した見解要旨 第1に、貴ノ岩の傷害事件に対する日本相撲協会の調査は第三者によるものではない。また、調査にあたった危機管理委員会は被害者の主張を聞く前に中間報告要旨を公表し、最終報告でも主張が反映されていない。協会の調査は公正中立とは到底評価できず、身内による不十分な調査と報告をもって済ませようとしている。第2に、(自身の)理事解任理由とされた事項は、いずれも法的には解任事由に相当するような職務義務違反になると認めることは困難。にもかかわらず、評議員会は弁明の機会を与えずに理事解任という重大行為に及んだ。内閣府公益認定等委員会に対し、立ち入り検査など適切な是正措置を求め告発した。

 ◆公益認定等委員会 内閣府に設置され、社団法人や財団法人の公益性を審議、認定する。立ち入り検査などを行って運営の実態を把握し、問題のある法人には勧告、公益認定の取り消しなどを行う。会計処理や財政基盤、理事会や総会・評議員会が適切に開催されているかなど組織のガバナンス(統治)もチェックする。最近ではレスリング女子で五輪4連覇の伊調馨が日本協会の栄和人強化本部長からパワーハラスメントを繰り返し受けたとして、レスリング関係者から同委員会に告発状が出された。過去に全日本柔道連盟や全日本テコンドー協会、日本近代五種協会、日本アイスホッケー連盟が勧告を受けた例がある。

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