貴乃花親方、2階級降格で全面降伏 一時は一代年寄剥奪も検討されていた

スポーツ報知
理事会の聴取後、国技館を後にする貴乃花親方(左)と貴公俊

 日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で理事会を開き、本紙既報通り貴乃花親方(45)=元横綱=に委員から年寄への2階級降格処分を下した。同親方は春場所の無断欠勤や、付け人に暴行した弟子の十両・貴公俊(たかよしとし、20)の監督責任を問われていた。親方衆の序列で最下位の年寄への降格は、理事経験者では極めて異例。元横綱・日馬富士関の暴行が発覚した昨年11月に理事だった同親方は、今年に入り3か月で計5階級、月給64万円ものダウンとなった。貴公俊は1場所出場停止処分が科された。

 「分かりました」。この日、午後1時22分。貴乃花親方は理事会が行われた会議室へ入った。処分を告げられると、冒頭のひと言とともに淡々と受け入れ、22分後に貴公俊と退出した。

 理事会後の会見で八角理事長(元横綱・北勝海)が公表した処分理由は2つ。無断欠勤と貴公俊の監督責任だ。より問題視したのは前者で、春場所初日から届け出なしで欠勤、出勤要請無視と“仕事”をしない日が続いた。協会員規則の職務専念義務に違反し「改善の催告を拒否、もしくは無視」の懲罰規定に該当。暴行の監督責任だけなら同じ峰崎親方は減俸処分だったが、貴乃花親方は3段階重いペナルティーが科された。

 前日の臨時年寄総会で一部親方衆が声にした「解雇」に相当する「契約解除」は免れた。今月9日に元日馬富士関の暴行問題で協会の対応を問題視して内閣府に告発状を提出。結果次第では公益財団法人資格の取り消しにつながりかねない行為に対し「一時は真剣に(貴乃花親方の)一代年寄の剥奪が検討された」と関係者は言う。大鵬、北の湖に続いて認められた一代年寄の剥奪は、他に年寄名跡を持たない同親方には退職危機となるが、「知名度、人気を考慮して踏み切らなかった」(同関係者)と、自らの雷名に救われた形となった。

 理事会では告発状を提出した日の理事会欠席なども加味して「厳罰」が下された。委員に下がった28日に続き2日連続の降格で、今年に入って3か月で理事から5階級もダウン。一時はナンバー3のポジションにいたが、この日、協会の職務分掌表の序列で83番目に名前が記された(1番目は理事長)。2年前の理事長選では競った相手の失墜に、八角理事長は会見で「まじめに仕事をしてくれて、組織人として改めてもらえればと思います」と出直しを期待した。昨年11月以降、協会に反発し続けた貴乃花親方の“乱”は、弟子の暴行問題による急転直下の全面降伏と処分決定で、区切りを迎えた。(網野 大一郎)

 ◆年寄 7階級ある親方のランクで一番下。横綱以外の力士が引退して親方になるとこのランクからスタートし、職務は西花道の場内警備から始める。月給は80万8000円。貴乃花親方は理事時代の144万8000円から3か月で64万円減額となった。同親方は審判を務めるが、平年寄の審判は12年2月の東関親方(元幕内・潮丸)以来(代理除く)。横綱経験者の年寄降格は、金銭問題で処分を受けた1985年の元輪島の花籠親方以来。

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