レジェンド葛西、8度目五輪でも緊張で前チャック開けて飛んじゃった…男子ノーマルヒル予選最年長突破

スポーツ報知
男子ノーマルヒル予選、98メートルを飛んで予選を突破した葛西(カメラ・相川 和寛)

◆平昌五輪 男子ノーマルヒル予選(8日、アルペンシア・ジャンプセンター ヒルサイズ109)

 開会式(9日)に先立ってジャンプ男子個人ノーマルヒル予選(HS109メートル、K点98メートル)が8日、アルペンシア・ジャンプセンターで行われ、14年ソチ五輪銀メダルの葛西紀明(45)=土屋ホーム=は98メートルの117・7点で20位となり、上位50人で争う10日の本戦進出を決めた。五輪出場は8度目で日本勢単独最多、冬季では世界でも歴代最多を更新した。今季個人総合8位の小林潤志郎(26)=雪印メグミルク=は101メートルで18位となるなど、日本勢は4人全員が予選を突破した。開会式は9日午後8時(日本時間同)から行われ、17日間の祭典が幕を開ける。

 レジェンドでも、重圧は計り知れなかった。98メートルの20位で本戦に進み「本当、うれしいですよ。8回目に出られて。予選に通るかとか、8回目達成できるか、というのがずっとあった」と息をついた。飛行中の葛西の襟は、はためいていた。ジャンプスーツの前チャックを閉め切れていなかった。冬季の世界歴代最多を更新する8度目の五輪は、どこか平常心でなかったのだろう。「飛び終わって(小林)陵侑(りょうゆう)に言われるまで気づかなかった」と照れた。

 「やっぱり(五輪の楽しさを)感じますね。(初五輪の小林潤志郎と陵侑の兄弟が)緊張して(スタート)台に行くのが(普段より)早いな、とか思って。それを見て楽しんでいる」。初出場の92年アルベールビル大会から出場を重ねてきた五輪。98年長野大会だけは忘れられない。金メダルに輝いた団体メンバーから外れ、歓喜の蚊帳の外。「今でも(会場の)白馬に行くと思い出す。飾ってある写真を見るたびに腹が立つ」というほどの強烈な反骨心を、力に変えてきた。ソチ大会で銀メダルに輝いても意欲は逆に燃えた。「金メダルが欲しい」

 ジャンプ男子では最年長45歳での出場。第一線を張れる自負もある。源は、小林陵侑(21)、女子の伊藤有希(23)ら土屋ホームの後輩たちを連れて例年5~6月に行う沖縄・宮古島合宿。地上数十センチほどの高さに、長さ10メートルほど渡したスラックライン(ベルト)の上を歩き、体幹を強化。縄跳び1600回、二重跳びは160回をこなす。「後輩たちのキツそうな顔を見るのが良い。やってやろう、という気持ちになる」とニヤリと笑う。練習量はウソをつかないと知っている。

 9日夜に行われる開会式では、日本選手団の旗手を務める。旗手が金メダルに輝けば、98年長野大会スピードスケート男子500メートルの清水宏保以来、5大会ぶり。「思い切り(旗を)振ってきたい。いろんな選手と会ってパワーを分かち合いたい」。ノーマルヒル決勝は10日。17日には本命の個人ラージヒル決勝もある。「五輪では完璧なジャンプをしないと上には行けない。完璧なジャンプを2本そろえて、表彰台目指して頑張ります」。世界大会でまだ手にしたことがない金メダルへ、ギアはまだ上がる。(細野 友司)

 ◆葛西 紀明(かさい・のりあき)1972年6月6日、北海道・下川町生まれ。45歳。東海大四高(現・東海大札幌高)から地崎工業などを経て、01年11月に土屋ホーム入社。五輪は94年リレハンメル大会団体銀、14年ソチ大会個人ラージヒル銀、団体銅。176センチ、59キロ。家族は妻・怜奈さんと長女・璃乃(りの)ちゃん。

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