羽生結弦、現地入り 94日ぶり公の場「勝ちたい」

スポーツ報知
韓国・仁川国際空港に到着した羽生結弦は真剣な表情で決意を語った(カメラ・相川 和寛)

 フィギュアスケート男子で66年ぶりの五輪連覇を狙う羽生結弦(23)=ANA=が11日、練習拠点のカナダ・トロントから韓国の仁川国際空港に到着した。昨年11月9日のグランプリ(GP)シリーズ・NHK杯前日練習中に右足首を負傷後、全日本選手権などを欠場。94日ぶりに公の場に姿を現した絶対王者は「どの選手よりも勝ちたいという気持ちは強い」と言い切った。足の状態を考慮し、団体戦は回避。個人戦の男子ショートプログラム(SP)は16日に行われる。

 「キャー」という歓声が、その時を知らせた。午後4時58分。日本代表のスーツに身を包んだ羽生が、仁川空港の到着ゲートに現れた。公の場に登場したのは、昨年11月9日のNHK杯前日練習以来、94日ぶり。両サイドにはサングラスに黒服のガードマンがずらり。患部をかばうそぶりはなく、しっかりとした足取りで“羽生ロード”を歩いた。

 「団体戦も見ていたけど、どの選手よりも勝ちたいという気持ちが強くあると思うし、どの選手よりもピークまで持って行ける伸びしろがたくさんある選手の一人だと思っている。頂点というものを追いながら、頑張っていきたい」

 決戦の地に降り立った絶対王者は、勝利に飢えていた。穏やかな表情と、闘志みなぎる言葉とのギャップ。羽生らしさは健在だった。

 日本オリンピック委員会(JOC)は組織委に空港警備の強化を要請し、羽生シフトを敷いた。100人近いファンとメディアが集結。羽生の移動中、周囲は一瞬、パニックに陥った。「走らないで!」。日本スケート連盟広報の怒号が飛び交った。海外メディアも駆けつけるなど、注目の高さは別格だった。

 氷上練習を再開したのは年明けから。氷から遠ざかった2か月間は焦りを封じ、陸上でのリハビリとトレーニングに無心で取り組んだ。「出られない試合もたくさんあって、もどかしい気持ちもあった。実際にこうして試合に来られたことがまずうれしい」。拠点のトロントで、足の状態と相談しながら追い込んできた。

 4回転ルッツの回避は決めているが、詳しい演技構成は直前まで再検討する。ミスが許されないSPはサルコーとトウループの2本の4回転を選択することが有力。フリーはループを跳びサルコー、トウループを含めた4回転5本にするのか、ループを抜いた4本なのか。「しっかり作戦を立てながら、考えていきたい」と話すにとどめた。

 1952年のオスロ大会でのディック・バトン(米国)以来、66年ぶりの五輪連覇がかかる。「もちろんそういう気持ちは少なからずある。自分にうそをつかないのであれば、やはり連覇したい」。団体戦を回避して臨む個人戦は昨年10月のロシア杯以来、4か月ぶりの実戦。SPが行われる16日までの5日間を使い、実戦モードを高めていく。これまで何度も逆境を乗り越えてきた。経験と強い気持ちが羽生の武器だ。(高木 恵)

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