氷点下10度…葛西「こんなの中止でしょう」、小林陵「凍る」

スポーツ報知
1回目を終え、葛西紀明(右)と談笑する小林陵侑(カメラ・相川 和寛)

 五輪の雪上競技が荒れた天候に翻弄されている。11日は中止、延期される種目が出た。10日には氷点下10度の極寒と強風の悪条件の中、スキージャンプ男子の個人ノーマルヒル決勝(HS109メートル、K点98メートル)が行われた。21位だった葛西紀明(45)=土屋ホーム=ら選手からも恨み節が続出した一戦をジャンプ担当の細野友司記者が見た。

 過酷さを象徴するコメントだった。W杯通算537試合出場、冬季五輪歴代最多8度目を誇る葛西だ。個人NH決勝で21位と踏ん張った後、「こんなの中止でしょう、と心の隅で文句を言いながら寒さに耐えていた」と苦笑いした。気温氷点下10度。秒速5メートル超の強風が吹き、体感は氷点下15度を下回った。7位入賞の小林陵侑も「足先が凍るかと思った」とため息をついた。選手の声をメモした取材ノートを見返すと、寒さで書いた文字がミミズのように震えて読みづらかった。

 平昌のジャンプ台は、小高い山の頂上にタワーを建てて、助走路を設けてある。台自体がアルペンシア・リゾートを見渡す展望台を兼ねているからだという。標高800メートル超の山岳地帯で、近隣の山々には風力発電用の巨大な風車が回るように風の強いエリアだ。

 大会組織委は高さ25メートルの防風ネットで助走路の三方を囲んで対策していた。ただ、選手が飛び出す側だけは当然囲めず、向かい風は防げない。夜開催は「風が比較的収まりやすいから」(大会関係者)というが、ジャンプ人気の欧州で生中継しやすい時間にしたい意図も透けて見える。景観重視のジャンプ台とあわせ、“アスリート・ファースト”なのか疑問を感じざるを得ない。

 この日も強風はやまず、瞬間的には体感で10メートル超の突風が吹き、メディア用テントがきしんでいた。16日にはラージヒル予選、17日は同決勝が控える。昨年2月、五輪プレ大会として行われたW杯は予定していたラージヒル1試合が強風で開催できず、ノーマルヒルで行われた。五輪はW杯のように代替開催するわけにいかない。伊東は「これだけ風が吹くと、恐怖心もある。(風向きの)運、不運で公平じゃないかもしれないけど、しっかりジャンプをまとめるしかない」と言い聞かせた。自然には勝てない。無事の開催を祈るしかない。(細野 友司)

 ◆ジャンプ競技会場の天候 男子NH予選の8日は最低気温が氷点下4度前後。風も弱く、競技は滞りなく進行。同決勝の10日は試合中は氷点下10度ほどの厳しい寒さ。5メートル前後の強風で競技が何度も中断した。11日はにわか雪で、最低気温は氷点下13度で時おり10メートルほどの強い突風も。12日の予報は最高気温、氷点下6度、最低気温、氷点下13度で曇り。日中は7~8メートルの風が吹き、女子の競技が行われる夜は3~4メートル前後に収まる見込み。

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