沙羅、勝負のスイッチ入ると別人…兄・寛大さん手記

スポーツ報知
銅メダルの高梨沙羅

 高梨の兄・寛大(かんた)さん(25)が、スポーツ報知に手記を寄せた。ジャンプ選手として活躍し、明大在学中の2015年ユニバーシアード混合団体銅メダル。卒業後の同年4月からはTBSに勤務し、16~17年シーズンから記者として本格的に沙羅を取材する立場になった。兄と取材者、2つの立場を通して見た沙羅の姿とは―。

 記者になってから、試合の時の沙羅が良い意味で怖いと思うようになった。高い集中力で“スイッチ”を入れて勝負モードになって、本当に別人にしか見えない。普段はとても仲が良くて、一緒にご飯や買い物に行ったりして楽しく笑っているから、よくそんな変われるなと(笑い)。取材で向き合うと、特にお願いしない限り答えは敬語。今までなら話しかけないような場面でも、記者として話さなければいけない状況になって初めて気付いたことだった。

 ジャンプ自体も、今までと違った角度から見るようになった。選手時代は台の上か真下でしか見なかったけど、撮影のために横から見たりする。沙羅はタイミングが遅れて飛び出したら右手が動くとか、今まで見えなかった癖にも気付けるようになった。やはり優れていると思ったのは、空中でのスキー操作。急に風向きが変わっても、うまく調節して最悪の状況を阻止できる。だから大失敗をしないのだとあらためて感じた。

 沙羅にとってのソチは、まさに教科書通りの絶望だった。連勝を続けて、絶対に金メダルが取れると思われていて、まさかの4位。これよりすごい絶望はないと思うし、絶対にもう味わいたくないから4年間頑張ってきた。W杯で勝っても、すごいうれしそうだな、とはあまり感じたことがない。少しでも自信を持たせて、衝撃的な経験から回復させるために白星を積み重ねているようにみえた。

 平昌五輪の代表だって、もともと約束されていたわけではない。自分で成績を残して勝ち取ったもの。ちゃんと復活できている。妹が五輪に行くだけで震えるような高揚感があるし、最高のプレゼント。この4年間の経験は、必ず今後に生きると思う。

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