美帆、800食写真撮って覚えた栄養フルコース…管理栄養士・村野あずささんが語る

スポーツ報知
必死の滑走を見せる高木美

 高木美帆(23)=日体大助手=は今後、団体追い抜きをはじめ1000メートル、マススタートと3つのメダルを上積みする可能性がある。常に複数種目に出場を続けるタフさと今季の躍進の原動力となったのが食生活の改善。自ら希望し、昨年5月から広告契約を結ぶ「株式会社明治」から栄養サポートを受けるようになった。担当する管理栄養士の村野あずささんが、9か月間の変化を振り返った。(構成・林 直史)

 二人三脚の歩みが始まったのは昨年5月だった。同時期に帯広で一人暮らしを始めた高木美は「世界でトップに立つために」と5つの課題と目標を掲げ、それに沿ったメニューの提供を希望した。だが、村野さんは「食生活や食環境はそれぞれ違う。私が何も知らない状態でメニューを提供しても意味がない。現状を確認して少しずつ良いものにしていきましょう」と提案。すると、「食事を毎日LINEで送っていいですか?」と申し出があった。

 その日から食事の写真が届いた。「しっかり量は食べていたけど完璧ではなかった」と村野さん。目指したのは、五大栄養素をバランス良く取る「栄養フルコース型」の形を覚えること。体脂肪を気にして抑え気味だった炭水化物に加え、おかずにはアスリートは体重1キロあたり2グラムが必要とされるたんぱく質を含む肉、魚、卵、大豆製品から必ず2品以上を選ぶ。ブロッコリー、トマトなどビタミンやミネラルが豊富な色の濃い野菜を食べる意識も高めた。免疫力を高めるビタミンCを補給するオレンジジュースや果物、低脂肪の牛乳やシリアル、ナッツ、ドライフルーツ、きなこ入りのヨーグルトなどの乳製品も毎食並ぶようになった。

 村野さんが驚かされたのは意識の高さだ。毎食の自炊や遠征先の宿舎のビュッフェだけでなく、間食のだんごやチョコレートの写真も届いた。「口に入れた物は全部送ってくれる。たまには気分転換でいいんじゃないと思うぐらい」。練習内容を時系列でまとめ、飲料水に至るまでいつ、何を食べたかを記した紙も添えられた。外食時には「今日はこれを食べたけど、本当はどれがいいですか?」とメニューの写真まで。「現場にいるのと同じように状況が分かる」。練習の強度や疲労度に応じたリアルタイムのアドバイスが続いた。

 自宅の冷蔵庫にはゆでたブロッコリーや煮たカボチャをストック。具だくさんのみそ汁も手間を省く工夫だ。行きつけの飲食店にも、鉄分強化のレバーやあさりなど調理が難しい食材を使ったメニューを特別に作ってもらえるように依頼した。海外遠征には米、サバ缶など現地で不足しがちな食材を持参。サプリメントへの知識も深めた。

 五輪前にも顔を合わせ、夜のレースで夕食が深夜になることも想定した対策を練った。村野さんは「こんなにこまめに継続できる選手はすごい。質問も高度。9月、10月にはアドバイスすることがないぐらいになっていた」と語る。携帯に届いた写真の数は800食を超えた。その一枚一枚が、メダルへの努力の証しだった。

 ◆栄養フルコース型 株式会社明治が推奨する体に必要な五大栄養素をフルに摂取する食事法。毎食に〈1〉主食(炭水化物)〈2〉おかず(たんぱく質、脂質)〈3〉野菜(ビタミン、ミネラル)〈4〉果物(ビタミン、炭水化物)〈5〉乳製品(たんぱく質、ミネラル)の5品をそろえる。それぞれに体づくり、疲労回復などの目的がある。

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