ノルディック複合の渡部剛弘に、ガリウムスキー部・佐藤純一部長がエール「何かをつかんで」

スポーツ報知
渡部剛弘

 ノルディックスキー複合は14日の個人ノーマルヒルから競技がスタート。福島・会津若松市出身の渡部(わたなべ)剛弘(23)が、初の五輪に挑む。所属企業「ガリウム」(本社・仙台市泉区)は、スキーやスノーボードのワックスで世界が注目するメーカー。営業部長兼スキー部長の佐藤純一さん(53)は「次につながる結果を残してほしい」とエールを送った。

 夢舞台は「複合のワタナベ」の存在感をアピールする場になる。渡部剛は2015年シーズンから本格的にW杯を転戦し、初の五輪切符を獲得した。日本複合界は前回ソチ銀メダルの渡部(わたべ)暁斗(28)、善斗(26)=北野建設=兄弟が有名で、渡部剛は次代を担う存在だ。佐藤部長は「代表が決まってホッとしました。まずは平常心で自分の力を発揮してほしい」と語った。

 ガリウム社は、世界のスキーヤーが注目する日本産スキー用ワックスメーカー。日本代表も複合など各種目に供給するほか、女子ジャンプの伊藤有希(23)=土屋ホーム=ら多くの選手と契約を結ぶ。「ワックス同様、選手も世界に送り出したい」と16年にスキー部が創部され、第1号選手が渡部剛だ。

 同社の結城谷行社長(57)は88年カルガリー五輪の距離代表。佐藤部長も98年長野五輪の距離コーチとして代表に帯同した。「渡部剛が在籍した明大の関係者から『渡部の距離を強化してほしい』という話をもらい、私たちの思いと一致したことからスキー部ができました」という。

 年間200日以上、代表チームや海外でのトレーニングをこなす。渡部剛も「やせると距離のスタミナが足りず、太るとジャンプが飛ばない」というように、競技には全身のバランスが重要。仙台にいる時は、社内の倉庫を改築したトレーニングルームで筋力強化し、夏は本社からほど近い泉ケ岳までローラースキーをするなど脚力を高めた。

覚悟を感じる 当初は走るトレーニングは苦手だった。しかし、今季前はしっかりこなすようになった。佐藤部長は「覚悟ができたのか、逃げなくなった。パワーの出力がうまくなり、力もついた」と成長に目を細めた。

 これまで後半の距離で大きく順位を下げていたが今年1月のW杯バルディフィエメ(イタリア)大会ではジャンプ13位から距離も踏ん張り、順位はひとつ落としただけの14位。「成果は少しずつ出ている。ジャンプと距離、両方でかみ合えば1桁順位に入る力もある」

 W杯の最高は昨季札幌大会などの7位。今はエース渡部暁を追いかける存在だ。「本人も『暁斗さんという目標の存在が近くにいるのはラッキー。いつかは勝ちたい』と言っていた。まずは力を出し切って、次につながる何かをつかんでほしい」と佐藤部長。“第3の渡部”が念願の大舞台で「ワタナベ」の名前を世界にアピールする。

 ◆渡部 剛弘(わたなべ・たけひろ)1993年7月13日、福島・会津若松市生まれ。24歳。ガリウム所属。元選手だった父・明仁さんの影響で、大槻中1年から競技を始め、猪苗代高3年時に世界ジュニア選手権(トルコ)出場。明大に進学し、2013年世界ジュニア選手権(チェコ)では団体銅メダル。17年世界選手権(フィンランド)ではラージヒル個人19位、団体4位。178センチ、61キロ。

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