店番手伝い、募金活動、教育実習…女子初の複数メダル・高木美帆が見せた周囲への気遣い

スポーツ報知

◆平昌五輪第6日 ▽スピードスケート女子1000メートル(14日・江陵オーバル)

 女子1000メートルで、世界記録保持者の小平奈緒(31)=相沢病院=が1分13秒82で銀メダル、高木美帆(23)=日体大助手=が1分13秒98で銅メダルを獲得。冬季五輪で日本女子が個人種目で初めて2人同時に表彰台に上った。高木美の1大会複数メダルも日本女子初の快挙だ。

 最高のレースができた。高木美が期待を抱いて視線を送った電光掲示板。低地で自身初の1分13秒台でも「1番、取れなかったな」。頭を抱えて悔しがったが、銀メダルに涙した1500メートルと違い、すがすがしい気持ちに包まれた。「出し切った上で3番を取れた。1500メートル以上に自分を褒めてあげたい」。最終組が滑り終え、日本女子初となる2つ目のメダルが確定すると、笑顔で跳びはねた。

 幼少期からスケートやサッカー、学業でも非凡な才能を発揮したが、周囲への気遣いを忘れなかった。高校時代、海外遠征中に日本を襲った大震災。本来は休日の帰国翌日、時差ぼけが残る中で率先して募金箱を持った。名物のチーズ入り大判焼きを求めて足しげく通った「高橋まんじゅう屋」のおかみさんが体調を崩すと店番の手伝いを志願。3日間でレジ打ちや接客をこなし、店主の高橋道明さん(54)は「普通は半年かけてものにする仕事。ずっと居てもらいたかった」と感謝する。

 2年前、母校・帯広南商高で教育実習を行った。保健体育の授業で自らモデルになって撮影したマット運動の動画を使って指導し、教材研究も熱心。スケート部の練習も手伝う多忙な合間を縫った最後の日、“美帆先生”はクラスの40人それぞれに手紙を渡した。3週間の間に一人一人の生徒に向き合った証しだった。

 全てに向き合う心優しき天才が、勝負師の顔で目の色を変えたのが、昨年12月W杯の1000メートル。同走の小平に世界新を出され「1000メートルへのモチベーションを上げる要素としては十分すぎる」と雪辱の思いを強めていた。またも小平に及ばなかったが、日本女子初の複数メダル。「想定していた以上。今季で一番」と語った会心のレースは、団体追い抜きにつながっていく。(林 直史)

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