【記者が見た】羽生は演技後も冷静、勝ち方を知っている王者

スポーツ報知
試合後の記者会見で並んだ上位3人(左から)2位・フェルナンデス、1位・羽生、3位・宇野(カメラ・酒井 悠一)

◆平昌五輪第8日 フィギュアスケート男子SP(16日、江陵アイスアリーナ)

 フィギュアスケート男子のショートプログラム(SP)が行われ、同種目66年ぶりの2連覇を目指す羽生結弦(23)=ANA=が4か月ぶりの復帰戦で自身の世界最高得点まで1・04点に迫る111・68点でトップに立った。世界選手権2位の宇野昌磨(20)=トヨタ自動車=は104・17点で3位。日本勢の今大会金メダル1号へ、冬季五輪では1972年札幌大会スキージャンプ以来2度目の日本勢ワンツーフィニッシュへ、17日のフリーに挑む。22番滑走の羽生は午後1時43分、最終24番滑走の宇野は同2時に登場予定。

 素晴らしい演技をした後ほど、羽生は冷静なことが多い。数々の海外メディアの取材を経て、日本メディアに対した第一声は「わあい、日本語だ」。興奮気味だったのは、我々報道陣の方だった。矢継ぎ早に質問が飛ぶ中、一語一句かみしめながら、この日のSPを振り返った。「とにかく満足っていう気持ちが一番。あとはまだ明日があるっていう気持ちが頭の6割近くを占めている」。頭の中で、自分の演技を整理しているようにも見えた。早くも気持ちは翌日のフリーへ向いていた。

 世界最高得点を記録した9月のオータム・クラシックの時もそうだった。「いきなりの世界最高得点ですが?」「はい…」。非常に落ち着いていた。右膝に痛みを抱えていたオータム・クラシック、右足首負傷からの復帰戦の今大会はともに、昨季からSP冒頭に組み込んできたループをサルコーに難度を落としている。復帰戦とはいえ羽生の中では、この構成ならこれくらいできますよ―という自負があるのかもしれない。

 前日(15日)には日本金メダル1号について「誰が取ろうが、僕も取ります」と言い切った。この日は違った。「特にチャンピオンになりたいとか、そういうことを言うつもりはない。ただ自分がやることがあると思うので、その自分がやるべきこと、やる必要があるものをやりたい」。

 勝ち方を知っている王者。決戦の時へ気持ちを整える術(すべ)も知っている。(フィギュアスケート担当・高木 恵)

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