【羽生結弦伝説】〈下〉中学まで指導・都築章一郎コーチ 4回転飛ぶためにトランポリントレ

スポーツ報知
都築章一郎コーチ

 羽生が「基礎を作ってくれた恩人」と感謝するのは、都築章一郎コーチ(80)。「彼は小さい頃から『これを成し遂げる』と決めたらとても努力家で、頑張ってやってきましたから」。小学2年生から中学まで指導し、土台を作り上げた人物だ。

 技術面はもちろん、世界で戦うための意識付けを行った。当時から「将来は4回転、5回転の時代が来る」と確信していた都築氏は「全6種類の4回転ジャンプができる選手になろう」と言葉を掛けた。陸上でのトランポリントレを導入した。「2回転3回転が早く跳べるようになっても、基礎ができていなければ4回転につながらない」。正しい回転軸を体に染み込ませた。羽生の完成度の高いジャンプのベースは、この頃に作られた。

 初めて羽生を目にした時の印象は「動き、感性が魅力的なスケーター」だったという。一方で、手を焼いたこともあった。「練習に飽きてくるとリンクの外に出ちゃうんですよ。それでボール投げをしているんです。そんな少年だった」。笑いながら、当時を懐かしそうに振り返った。

 羽生自身も自らの性格を「頑固」と分析する。都築氏は「納得しないとなかなか動かない。それが彼の良さ。その代わり、自分が決めたら100%に近いものをやる。それが彼の強いところ。だから試合に強い」。やると決めたときの集中力は、当時から群を抜いていた。

 五輪前に都築氏はこう話していた。「自分のイメージがこうだと定まったときは、少しくらい何かあっても持って行くだけの能力がある。小さい頃から持っている一つの能力」。右足首に痛みを抱えながらの4か月ぶりの復帰戦で、羽生はその通りの名演をやってのけた。(高木 恵)

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