小平奈緒のコーチが仲間が、オランダ留学の2年間を振り返る

スポーツ報知
女子500メートルに出場し、金メダルの小平奈緒

◆平昌五輪第10日 ▽スピードスケート女子500メートル(18日、江陵オーバル)

 小平は14年ソチ五輪後にオランダに留学した。ヘーレンフェインを本拠地とする「チーム・コンティニュ」(現在は解散)に所属。当時のコーチやチームメートが過ごした2年間を振り返った。(取材、構成・林 直史)

 女子500メートルで今季W杯代表のシャニーヌ・スミット(26)は当時、6人いた短距離陣の仲間だ。同じ距離の小平を「常に自分の限界を目指してスケートをしていた」と尊敬している。

 「2年間ですごく積極的になった。オランダ人は考えていることを何でも言っちゃうけど、ナオも少しずつ冗談や思っていることを言うようになった」

 練習の帰りに、カフェで談笑する機会も多かった。

 「最初はコーヒーも苦手でカプチーノから飲み始めたけど、今は普通に飲めるみたい。この前会った時もみんなでコーヒーを飲んだわ。よく話したのは日本とオランダの違い。スケートや家族、習慣、学校とか」

 手料理の味も忘れられない思い出だ。

 「ナオの家ですしを作って一緒に食べたことがあった。材料を日本から持ってきて。どの料理もおいしかったけど、本人は和食が好きで、みそ汁は常に作っていた。特に朝食は和食がこだわりだったみたい」

 長野五輪で男子長距離2冠のジャンニ・ロメ(45)は、コーチとして2年間指導。「すごく熱心でいつもビデオを見ていた。生活の全てがスケートだと感じた」という。チームを離れてからも試合の映像は欠かさずチェックし「自信が付いたのか前と違ってキラキラしていて、光を感じる」と成長に目を細める。オランダ語を必死に理解しようとする熱意にも驚いた。

 「常にノートを持ち歩いて、分からない言葉をメモしていた。2年目は会話ができるぐらいになり、すっかりオランダ人だった。SNSにもオランダ語で投稿していたから、オランダにもフォロワーが多いんだ」

 もう一人のコーチで98年長野五輪女子1000、1500メートル金メダルのマリアンヌ・ティメル氏(43)は五輪で通算3個の金メダルを獲得している。現役時代の鋭い眼光に魅了された小平が、チームを選ぶ決め手となった存在だ。

 「オランダに来てくれてうれしかった。そこまでしたいという思いはすごい。考え方も私や(1500メートル金、3000メートル銅の)ブストに似ていて、現役の時の話を熱心に聞いてきたわ。ユーモアもあった。『今のことを頭のホームページに書き込んで』と言ったら『まだダウンロード中なので無理です』。面白い返しだった」

 小平がまだオランダ語を理解できなかった頃、「BOZE KAT」(オランダ語で怒った猫)と愛称を付けた。前かがみになっていた肩を「怒った猫」のように上げ、重心を低くしたフォームを意識させるためだった。「言葉が通じなかったので、怒った猫の写真を見せたら、実際に変身したわ。ネズミから怒った猫になって、今は怒った虎。理解して達成できる能力を持っている」と語る。

 一方で、愚直な性格はマイナス面でもあった。「彼女にとってはNOと言うのが難しいと感じた。体調が悪くても試合に出られないと言わない。こちらが止めなきゃいけなかった」。息抜きに日本人の知人を紹介し、アムステルダムまでソフトボール日本代表の試合を見に行かせたことも。チームで2年間を過ごすうちに「やり過ぎず、バランスのいい練習をこなすようになって上達した」と変化を認めた。

 「いい思い出ばかり。できれば彼女のコーチをもっと続けたかった。それはできなかったけど、今でも気にして連絡を取り合っています。どんなに周りが注目しても、自分のままでいること、自分が選んだ道を進むことが大切。そうすれば絶対にうまくいく。ナオは常に私の心の中にいます」

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