小野塚彩、命懸けの2大会連続入賞5位「出し切った」

スポーツ報知
女子ハーフパイプ決勝、5位となった小野塚彩那は悔し涙を流した(カメラ・相川 和寛)

◆平昌五輪第12日 ▽フリースタイルスキー女子ハーフパイプ(20日・フェニックス・スノーパーク)

 女子ハーフパイプ(HP)決勝が行われ、17年世界選手権金メダルの小野塚彩那(29)=石打丸山ク=は82・20点で5位だった。昨年12月のW杯第2戦の予選で転倒し、脳震とうを起こした技「ライトサイド720」(右回転の2回転)を決めて入賞圏に食い込み、14年ソチ五輪銅メダルの意地を見せた。キャシー・シャープ(カナダ)が95・80点で優勝。33歳のマリー・マルティノ(フランス)が92・60点で2大会連続銀メダルに輝いた。

 小野塚は力を尽くした。3回目で82・20点を出し、5位入賞が確定。ソチ大会に続く表彰台は逃したが、日の丸が揺れる客席に笑顔で手を振れた。「自分のやれることはしっかり出し切ったと思うので。やりきって終われないのが一番悔しいから、良かった」。戦い抜いた表情は、どこまでも穏やかだった。最終ヒットに成功した「ライトサイド720(ライト7)」に、攻めた証しが詰まっていた。

 昨年12月のW杯コッパーマウンテン大会予選で、ライト7を失敗し転倒。脳震とうを起こし、数分間の記憶を失った。五輪2か月前のタイミング。体は幸いにも軽傷で済み、1月のW杯スノーマス大会は3位。周囲は胸をなで下ろしたが、小野塚は心に重い傷を負っていた。また転ぶかもしれない―。技を出そうとスピードに乗った瞬間、全身が恐怖で満たされた。「本当に自分自身との闘いだった」

 フリースタイルスキー女子HPでは、12年1月に05年世界選手権女王でXゲームも4度制したサラ・バークさん(享年29歳)が練習中に頭部を強打し、帰らぬ人となった。命が懸かる恐怖心に、簡単にふたはできない。日本代表の津田健太朗コーチ(34)はこの日、「(演技が終わって初めて)『やっぱり怖かった』と。最後まで弱音を吐かずにやった。果敢に挑戦してくれた」とたたえた。小野塚は「やりきった」と目に涙を浮かべた。

 優勝したシャープとは13・60点、表彰台圏までも9・40点の差がついた。技の高難度化の波は、自覚している。「上位3人のレベルが圧倒的だった。ただ、4年前と比べたら技数も増えて、やれることも多くなっている。練習の量にも自信を持って胸を張れる」とうなずいた。1年後には19年世界選手権(米国)もあるが「先のことは少し休憩してから考えたい」。完全燃焼できた充足感に、今は浸る。(細野 友司)

 ◆小野塚 彩那(おのづか・あやな)1988年3月23日、新潟・南魚沼市生まれ。29歳。新潟・湯沢高から専大に進学。2011年からHPのW杯に参戦。五輪は14年ソチ大会銅メダル。世界選手権は13年大会銅メダル、17年大会金メダル。158センチ、50キロ。

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