デビットコーチ就任3年“スピード”改革 史上最多6メダル

スポーツ報知
女子マススタートで金メダルを獲得し、日の丸を掲げウィニングランする高木菜(カメラ・酒井 悠一)

◆平昌五輪第16日 ▽スピードスケート女子マススタート決勝(24日、江陵オーバル)

 スピードスケートの日本勢は平昌五輪で金3、銀2、銅1と同競技で史上最多6個のメダルを獲得した。メダルゼロに終わった4年前のソチ五輪からの躍進に大きな功績を果たしたのが、ナショナルチームの中長距離ヘッドコーチを務めるヨハン・デビット氏(38)だ。15年5月の就任から、3年足らずで日本を変えた手腕に迫った。(林 直史)

 現役選手時代は目立った実績がなく、20代で指導者に転身したデビット氏はあらゆる面で「厳しさ」を求める。日本に来て最初のミーティングで「全てにおいて100%でなければ駄目だ」と告げた。

 《1》睡眠、食事、体脂肪率の徹底管理 ドーナツやクロワッサンを頬張る選手を見かけると「何でこんなに脂っこいものを食べているんだ。勝つ気があるのか!」と激怒した。ホテルのビュッフェのメニュー変更や、遠征時の余計な時間短縮のため、飛行機の乗り継ぎの回数を減らすことまで連盟に要望した。

 《2》“オランダ流”を取り入れた練習 特徴的なのは自転車の活用。固定した自転車での練習は日本でも行われていたが、デビット氏はロード練習に長い時間を割いた。2~3時間かけ100キロこがせることも珍しくない。チームの海外遠征にも持参させ、航空会社の超過荷物料金が170万円に上ったこともあった。

 《3》科学的な視点 最大酸素摂取量など膨大な数値を蓄積。練習に悲鳴を上げても、測定したデータを基に「まだいける」と妥協を許さなかった。世界のトップ選手の数値と日本選手を比較し「大きな差はない。だから同じようにできるはずだ」と意識を変えさせた。

 《4》対話にも尽力 滑り終わった選手には必ず声をかけ、数値に表れない兆候を探り、雑な部分が見えれば諭した。メダリストを育てるのではなく、全員の自己ベストを伸ばすことが信念。日本スケート連盟の湯田淳スピード強化部長(45)は「選手の成長を心の底から『やったね』と喜び、寄り添って一緒に悩んでくれるコーチ」と評価する。

 今季、あるW杯の大会で、オランダのスタッフが「何でヨハンを日本にやったんだ!」と憤る声が日本チーム関係者の耳に入ってきた。スケート大国のノウハウを取り入れたい狙いもあった招へいだったが、関係者は「オランダ人が来たから強くなったわけじゃない。ヨハンだからだ」と語る。最高のコーチとの出会いが、日本の快進撃を導いた。

 日本スケート連盟は、このほどデビット氏との契約を更新することで大筋合意。さらなる成果を目指してオランダ流の指導体制は継続する。

 ◆金200万ゲット

 高木菜は、2個の金メダルによってビッグボーナスもゲットする。日本オリンピック委員会(JOC)はメダルの色に応じて報奨金を出しているが、現行では金が500万円、銀200万円、銅100万円(団体競技は選手それぞれに支給)。このほかにも、各競技の連盟は独自で報奨金を設定しており、スケート連盟はJOCに準じている。つまりスケートの場合は金メダル1個につき500×2で1000万円となり、高木菜は2000万円を手にすることになる。ちなみに今大会で金・銀・銅の3つのメダルを取った妹の高木美には1600万円。姉妹で合わせて3600万円となった。

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