羽生、東京五輪で聖火ランナー 「TOKYOの顔」としてJOCが起用検討へ

スポーツ報知
ANA本社の祝勝会で、五輪連覇を祝福され笑顔を見せる羽生結弦(カメラ・小泉 洋樹)

 平昌五輪のフィギュアスケート男子で66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦(23)=ANA=が27日、2020年東京五輪の聖火ランナーの有力候補に急浮上した。国民的ヒーローとしての地位を確立した羽生に対し、日本オリンピック委員会(JOC)などが「TOKYOの顔」として起用の検討に入る可能性が出てきた。羽生はこの日、東京ミッドタウン(港区赤坂)で一般開放された帰国報告会に出席するなど、大忙し。報告会にはファン5000人が集まるなど、フィーバーは続きそうだ。

 国民的ヒーローの登場に、東京ミッドタウンはライブハウスのような盛り上がりを見せた。羽生がステージに上がると、一斉にシャッター音が鳴り響いた。平昌五輪選手団の解団式に続いて行われた、選手137人が参加した帰国報告会。ハイライトはやはりこの人だった。右足首の負傷を乗り越えての頂点に「これからの人生を全て懸けた結果の金メダル」。平日の午前中にもかかわらず集まった約5000人のファンが、“ユヅ語録”にうなずいた。

 笑顔、笑顔の羽生だったが、進行役の松岡修造から「五輪とは何か?」と振られると、「人生そのものです。全てを懸けないと勝ち切れない」と真剣な表情に戻った。かつて「野球は人生そのものだ」と語った巨人軍・長嶋茂雄終身名誉監督(報知新聞社客員)にも重なる言葉で、「金」の重みを表現した。

 その羽生に大役がオファーされるかもしれない。国を挙げての盛り上がりを受け、複数のJOC関係者が、東京五輪の聖火ランナーの有力候補となる可能性を認めた。「平昌のメダリストが聖火ランナーになる話は当然出てくる。特に羽生選手は超一流のアスリートで、ふさわしい。国民の声としても(スターとして)評価が固まっているし、議論に値する」とあるJOC関係者。JOCは近日中に東京へ向けた選手強化本部会を開くが、そこで話題に上ることも十分考えられる。

 聖火リレーには一般人を含め多くの人々が参加するが、現役のトップアスリートの参加は珍しい。また、冬季競技の選手が、夏季大会に向けたランナーを務めるのも異例だ。東京五輪の開会式は20年7月24日に新国立競技場で行われるが、別の関係者は「ぜひ羽生選手には新国立を走る中の一人になってもらえたら」と、最も注目度の高いクライマックスへの出演も望んだ。スピードスケートの小平奈緒や高木美帆らと“黄金リレー”も検討の対象となりそうだ。

 この日は約8時間のうちに都内で6つのイベントに出席する多忙っぷり。聖火ランナーに関しては五輪組織委とJOCの間での調整なども必要になってくるが、世界への五輪発信に最適な人材なのは間違いなく、今後議論が深まるとみられる。

 ◆聖火と名場面 聖火ランナーの中でも、特に開会式ではその時代や国民を象徴する存在が登場する。

 ▼64年東京五輪 陸上男子400メートルなどで強化指定選手だった坂井義則が選考会で落選。原子爆弾が広島に落とされた日に生まれた坂井は「スポーツと平和」を掲げる五輪の最終聖火ランナーに起用された。

 ▼96年アトランタ五輪 ボクシングの元世界ヘビー級王者ムハマド・アリが、パーキンソン病で震える手で聖火台へ点火する姿は世界中に感動を呼んだ。

 ▼98年長野五輪 92年アルベールビル五輪のフィギュアスケートで銀メダルを獲得した伊藤みどりが能衣装、白装束に蓮(はす)の花を頭につけ“天女”となって聖火台に火をともした。

 ▼18年平昌五輪 フィギュアスケートの元世界女王・金妍兒(キム・ヨナ)さんが最終走者に。聖火台のもとに特設されたリンクで舞い“聖火スケーター”となった。

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