NHK職員が受信料58万円着服 領収証発行後に履歴消去…28日付で懲戒免職 

スポーツ報知
職員の処分を発表し、謝罪したNHK幹部

 NHKは21日、昨年10月から今年12月にかけて滞納者への訪問集金により受け取った受信料21世帯分、58万円余りを着服したとして、名古屋放送局中央営業センターの男性職員(37)を28日付で懲戒免職にすると発表した。不正を認め、今月20日までに全額弁済したが、同局は告訴を検討している。受信料制度をめぐっては、最高裁が合憲と初判断を下したばかり。国の“お墨付き”をもらった同制度に水を差される形となった。

 NHKによると、職員は「親族の病院の治療費を支払うために借金をしていた」などと話し、着服を認めている。同局は「公共放送の職員として言語道断」と判断し、懲戒免職処分とした。

 職員は2002年に入局し、昨年7月に現在の名古屋放送局に赴任。営業畑一筋で、同僚には仕事熱心な人物との評判もあったという。だが3か月後には不正に手を染めた。訪問集金は、2008年9月に廃止され、現在、受信料は、口座・クレジットカード、振り込み用紙での支払いが基本。だが、滞納者らに対しては、訪問集金が行われている。

 これまでにない狡猾(こうかつ)な手口だった。受信料を収納した際、訪問先に領収証を発行。しかし入金はせず、同局のコンピューター管理システムから領収証の発行履歴を消去し、受信料を集金したことが分からないように細工した。さらにその後、支払い済みの訪問先に再度請求がいかないように、管理システムを不正に操作し、1年2か月間隠蔽した。

 支払い済みのはずの受信料の振込用紙が届いたという視聴者からの問い合わせがあり、着服が発覚した。同局が調査を進めると、職員が愛知県内の21世帯分、58万2385円を着服していたことが判明した。NHKは男性職員の上司に当たる同センター長を出勤停止3日、同センター副部長2人を同1日の懲戒処分にした。担当役員の松原洋一理事が1か月分の報酬の10%を自主返納する。

 受信料をめぐっては、6日に最高裁が、テレビ設置者に受信契約を義務付ける現行制度を合憲とする初判断を下したばかり。この日、緊急会見を行った同局の中田裕之理事は「受信料に社会的な関心が高まる中、視聴者の信頼を傷つけたことは慚愧(ざんき)の念に堪えない」と声を震わせた。

 NHKは、集金業務を行った職員が自分で情報や記録を修正できないようシステムを改善するなどの再発防止策も発表した。

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