なぜ今年「レモンサワー」に脚光? 女性の健康志向やインスタ映え、「LDH」効果指摘の声も

スポーツ報知
「レモンサワー発祥の店」といわれる東京・上目黒の「もつ焼き ばん」の小杉正さん

 アルコール飲料業界において、今年最も注目されたのが「レモンサワー」。若者を中心に飲酒習慣が衰退傾向の中、「爽やかな飲み物」と人気を集め、「レサワ女子」なる言葉も登場。宝酒造の「レモンサワー用焼酎」も売り上げを伸ばしている。かつては安く飲めて酔える居酒屋の定番だった酒が、なぜ注目されたのか。忘年会シーズン真っただ中に、レモンサワーをよく知る人たちに聞いた。(高柳 哲人)

 焼酎を炭酸水で割り、レモン果汁を入れて飲む「レモンサワー」。1980年代には「チューハイブーム」が到来し、「サラリーマンが居酒屋で安くたくさん飲む酒」というイメージがあったが、最近はちょっと事情が異なる。

 ビタミンCが多く含まれ、飲みやすいことから近年若い女性にも注目され、女性誌には「レサワ女子」という言葉も登場。氷や高級レモンにこだわった“ブランド化”も進んでいる。

 「レモンサワー用焼酎」を発売している宝酒造も、人気上昇に驚きを見せる。ビールを中心にアルコールの売り上げが減少する中、サワーで主に使用する甲類焼酎の今年1~8月の業界全体の売り上げは平年並みを維持。さらに、同社の焼酎全体の売り上げは104・4%と数字を伸ばした。「レモンサワー用焼酎」が躍進の原動力となったとみており、同社環境広報部の奈良有里代さんは「甘くないのが特に女性の健康志向に合ったのだと思います」と分析。レモンのカット方法も、さまざまなものがあり、「『インスタ映え』することも人気を集めた理由なのでは」と話した。

 「レモンサワー」の呼び名が生まれたのは、40年以上前。その「発祥の店」とされるのが、東京・上目黒の「もつ焼き ばん」だ。創業者の小杉正さん(87)は「炭酸と焼酎だから、昔は『タンチュウ』『チュウタン』と呼ばれていた。レモンを入れたら爽やかな味だったので『サワー』と名付けたんですよ」。かつては中年男性が客層の中心だったが、最近は若い女性だけのグループも増加。現在も平均して1日250個のレモンが出るという。

 「元祖」ならではのお薦めの飲み方を聞くと、「こちらから言うものではないと思うんです。搾ったレモン汁と炭酸を好きなだけ焼酎に入れて、お好みで」と小杉さん。ちなみに、同店のつまみでレモンサワーに合うのは「もつ焼き、とんび(豚の尾)豆腐、レバカツ」だそうで「若者の『酒離れ』が進む中、注目されているのは本当にうれしい」と目を細めていた。

 ◆EXILEのUSA「一晩で2000杯飲んだ」は本当です

 レモンサワーといえば、有名なのがEXILE、三代目J Soul Brothersらが所属する事務所「LDH」。さまざまなメディアで飲み会の“公式ドリンク”と公言しており、宝酒造の奈良さんも「LDHの方々の影響力は強い」とみている。

 EXILEのUSA(40)は「昔、お金がない頃に安く酔えたというのが始まり」と振り返る。EXILEのリーダーHIRO(48)が飲んでいたのを他のメンバーも倣うようになり「つまみを邪魔しないし、ビタミンCも取れる…かなと(笑い)。スッキリ度が絶妙で良かったんでしょうね」と語る。

 ちなみに「一晩で2000杯飲んだ」「店のレモンと酒がなくなった」という都市伝説のような話もあるが…。「実は本当なんです」とUSA。「とはいっても、2000杯の時は打ち上げで数十人いたんですよ」

 一番おいしく飲める瞬間は「やはり、パフォーマンス後。何の仕事であっても、達成感があった時の一杯は最高ですよね」。レモンサワーがブームになっていることには「おいしさ、喜びを分かち合えるのはうれしい」と語るが、「テキーラマエストロの資格を持っているので、来年は『テキーラサワー』をブームにしたい」と話していた。

 ◆焼酎メモ 連続式蒸留器で蒸留したアルコール分が36%未満の甲類、単式蒸留器を使う45%以下の乙類、“キンミヤ”こと「亀甲宮」や「鍛高譚(たんたかたん)」など両者をブレンドした混和がある。クセのない味わいが特徴の甲類がレモンサワーに適していると言われるが、USAによるとLDHでは乙類の麦焼酎を使用するという。

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