元日経新聞記者で元AV女優の鈴木涼美さん お金、幸せ、若さで“迷走”する女性たちに迫る

スポーツ報知
鈴木涼美さん

 作家の鈴木涼美さん(34)が、最新著書「オンナの値段」(講談社)を刊行した。慶大卒、東大大学院修士、元日経新聞記者で元AV女優という異色の経歴の持ち主。17年に「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(14年、幻冬舎文庫)が映画化されるなど、著書は多数。最新刊で描くのは、お金と幸せと若さを持て余して“迷走”する女性たち。「男並みに稼ぐ女性も増えた中、今後、私たちはどのようにお金と付き合っていくべきなのか、この本を通して考えるきっかけにしてもらえたら」と思いをはせた。

 「オンナ―」には、鈴木さんが自身の経験を元に幅広い人脈を駆使して取材を重ねた女性たちが登場する。4年間で8000万円を稼ぎ、それを使い切った女子大生風俗嬢、ホストクラブで一晩1600万を使ったキャバクラ嬢、お金に困っていないのに夜の仕事を掛け持ちするワーカーホリックの女性など。どれも、いわゆる“一般人”的な生活を送っていれば、出会う機会の少ない女性ばかりだ。

 鈴木さんは、異色の経歴で磨き上げた独自の視点で様々な人物にスポットライトを当てる。17年8月には「おじさんメモリアル」(扶桑社)を出版した。同著は、風俗嬢から見た一風変わった“おじさん”たちを集めた1冊だ。半分は自身の経験を基にしている。「全然違うのに『俺のこと書いたでしょ』って自意識過剰タイプと『俺のことが出てきたらどうしようって思って冷や冷やしたけど、良かった』って無意識な人がいる」。細部こそ変えながらも、興味深い当事者たちの反響を楽しむ。

 元AV女優という肩書が目立つが、09年に東大大学院修士課程修了し、日本経済新聞社では東京本社地方部都庁担当などに所属。15年4月からは同博士課程に進学。TOEIC970点で趣味は「勉強」。お嬢様学校で育ち、その反動から“ギャル”となり、再び学歴を求めて慶大に入学。AVデビューしたのは在学中だ。振り幅の大きい人生を送り「よく『キャラが渋滞している』と言われる。私はターンし続けているというか。この辺で身が固まり出すと、辞めて逆に行くクセがある」と笑う。

 新聞記者を目指そうと思ったきっかけも「AV女優が行かなそうな会社に入りたいと思った」と振り返る。週刊文春で「元日本経済新聞記者はAV女優だった」と報じられたのは、退社後だった。「入社したときも『見た目が日経っぽくない』『珍しい』『かわいい』とか。それが価値だけど、30歳になると『若い女の子』という価値がなくなる。会社員だと普通に生きていけるけど、プラスで得している部分がなくなって、ちょっとさみしい。自分の価値が下がっている感じがしたら、新しいものを見つけなきゃと思う」。すべてが、その繰り返しだと明かす。

 独特の価値観が、執筆業にもいきる。「自分のキャラを壊し続けて、どれも等しく転機。一番大きいのはどれ、というのはない。どれも辞めるときは、割とサラッと。日経も、AVも。私の中でAV女優やっていたことと日経で記者をやっていたことって、大体同じぐらいの重さなんです」

 30代半ばとなり、結婚願望ものぞかせながら、まだまだ“破壊願望”が消えることはない。「柔らかく、ぶっちゃけけた文体の軽いものを立て続けに出してきた。(この先は)思いっきり堅い、普通の人が読めないぐらい小難しい本を出そうかなと思っています。5年以内に。それで、その後、信じられないぐらいアホくさい本を出したい。書くことが好きなので、そこから出ることはないけれど、その中で常に裏切っていきたい。『この人っぽい!』というイメージが出来だすと、反抗したくなる」と目を輝かせる。

 そんな鈴木さんが今、抱く野望とは―。

 「ノーベル賞を取りたい」

 ◆鈴木 涼美(すずき・すずみ)1983年7月13日、東京都生まれ。34歳。04年、慶大環境情報学部在学中にAV女優デビュー。07年、東大大学院学際情報学府入学。09年、日本経済新聞社入社。東京本社地方部都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年、修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)出版。14年、日経新聞退社。15年4月、東京大学大学院博士課程進学。17年に著書「身体を売ったらサヨウナラ」が映画化。TOEIC970点。身長158センチ。

社会