直木賞に門井慶喜さん「銀河鉄道の父」、セカオワSaoriは受賞逃す

スポーツ報知
芥川賞・直木賞の選考会場に入る浅田次郎さん

 第158回芥川賞と直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれた。

 直木賞には3度目の候補だった門井慶喜さん(46)「銀河鉄道の父」(講談社)が決まった。人気バンド「SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)」のSaoriとして活動する藤崎彩織さん(31)も初候補だったが、受賞はならなかった。

 直木賞選考委員の伊集院静さんは門井さんの受賞理由について「大体、投票で(決まった)。圧倒的に門井さんの作品が約7割を占めていましたね」と明かし「後の4作品は1軍半くらいのところで横並びだったね。2軍と言わないところが私の優しいところで」と笑顔で続けた。

 「藤崎さんは才能があって、感性もある。ただ、初めての作品ということで完成度が低かった」とSaoriの作品について評価。「物語というのは作り事というのはきれいに書けるけど、真実というのは描きにくい。最初に書いた作品としては非常に才能があるという評価がありました」と続けた。

 門井さんの作品については「歴史的な事実だけでなく、宮沢賢治が父のことをいかに思っているかが、ちゃんと書いてあった。こういう小説は中々ない。門井さん自身が父の問題と初めて対峙(たいじ)したのではないか。愛情などが細部に宿って、小説という成功だったと思う」と高く評価した。

 伊集院さんは最後にSaoriについて、「彼女は素晴らしい楽曲に出会ってきたと思うけど、今後は素晴らしい小説に出会うといい」とアドバイス。

 その上で「素晴らしい才能です。音楽業界の方が芸人より純粋だったということでしょうね。物の見方に才能を感じた。もう一点は物を見るのに、斜めにならない。そういう所が良かったと思います」とSaoriの才能を認めたが、今回、処女作で候補作に入ったことについては「(議論は)それはありましたよ。選考会でも、どういうことなんだと。そんなことを争っていては長くなりますけど」と明かした。

 「藤崎さんが小説がいかに面白いか気づかれたら、もっと素晴らしい作家になると思う。音楽より作家の方がいいと思う。作家には解散はありませんし、世界が終わるということもありませんから」と笑わせ、音楽界からの文学界参入については、「文学の方が高尚という発想はしない。特に若い、違う世界の人が入ってくるのは非常にいいこと。若い編集者が追いついて、新しいものを提供してくれるのを楽しみにしています。プロ野球選手が書いてもいいけど」と続けた。

 ▽第158回直木賞候補作

 彩瀬まる「くちなし」(文芸春秋)▽伊吹有喜「彼方(かなた)の友へ」(実業之日本社)▽門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)▽澤田瞳子「火定(かじょう)」(PHP研究所)▽藤崎彩織「ふたご」(文芸春秋)。

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