若竹千佐子さん、63歳主婦デビュー作で芥川賞「何歳でも遅いということはない」

スポーツ報知

 第158回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、都内で開かれ、芥川賞は若竹千佐子さん(63)の「おらおらでひとりいぐも」と石井遊佳さん(54)の「百年泥」に決まった。直木賞は門井慶喜さん(46)の「銀河鉄道の父」が選ばれた。賞金は各100万円。

 還暦を過ぎてデビューした遅咲きの新人が、処女作で芥川賞をゲットした。えんじ色のドレスで登壇すると「人生の終盤でこんな晴れがましいことが起こるなんて信じられない」と声を弾ませた。74歳でひとり暮らしの「桃子さん」の老いの境地を描いた物語。「この間、座骨神経痛になりまして…。まだまだ老いを知らないんだなと痛切しました」と笑わせた。

 若竹さんは、岩手県遠野町出身。昨年、同作で第54回文藝賞を最年長の63歳で受賞、同11月に作家デビューした。専業主婦だったが、夫を亡くしたことをきっかけに55歳で小説講座に通い始めた。63歳は史上2番目の年長受賞だが「何歳でも遅いということはない。いつでも始められるというのが私の実感です」。夫にどう報告するかを問われ「和美さん、私やったよ、ということですかね」と目を潤ませる場面もあった。

 題名は、宮沢賢治の詩「永訣の朝」のなかで、唯一ローマ字で表記されているフレーズ「Ora Orade Shitori egumo」から。岩手弁で「私は私で1人で逝くから」の意味と解釈できる。

 直木賞候補に挙がった人気バンド「SEKAI NO OWARI」のメンバーでもある藤崎彩織さん(31)の「ふたご」は落選。選考委員の伊集院静氏は「最初の作品としては非常に才能がある」と評した。

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