マツコが火付けた冬アイス、人気のヒミツ…コンビニ研究家・田矢信二さんに聞く

スポーツ報知
和洋さまざまなアイスが店頭に並んで冬場の売り上げを増やしている(左下が「ワッフルコーン桔梗信玄餅味」、右下が「キャラメルマカロンアイス」)

 冬でもアイスクリームが売れている。総務省の家計調査によると、昨年2月のアイス、氷菓への1世帯(2人以上)当たりの支出額は397円と4年前の1・4倍(総務省家計調査)。「冬アイス」という言葉も定着し、人気はこの冬も続いているという。その理由をコンビニ研究家の田矢信二さん(41)に聞いた。(芝野 栄一)

 アイスの市場が拡大している。日本アイスクリーム協会によると、2016年度(16年4月~17年3月)のアイス、氷菓の販売額は5年連続で増加し、11年度との比較で21・7%増の4939億円。特に、冬場の伸びが顕著で「アイスクリームは『夏に食べるもの』から『1年を通じて楽しむもの』に変わりつつある」と説明している。

 田矢さんは「冬のアイスが人気商品になったのは、コンビニの流行への感度、商品開発力が影響している」と指摘した。「コンビニ業界は10年ほど前から、それまで『デザート』と言われていたフルーツや甘いお菓子を『スイーツ』と言い換え、はやらせた。その中で、最近ではアイスもスイーツとして商品強化された」という。また、冬はハロウィーンやクリスマスなど家族で楽しむイベントが多いことから、スイーツは新商品を出しやすいタイミングと言われている。「コンビニに引っ張られる形で各メーカーがアイス・スイーツ市場を開拓し、次々と新商品を開発したことが売り上げ増につながった」と田矢さんは分析する。

 「アイスだけではありませんが、お客さんを飽きさせない各社の企業努力が人気を支えている。特に、コンビニの商品開発力はすごい」と田矢さんは感心する。この冬、セブン―イレブン・ジャパンは山梨の老舗菓子メーカー・桔梗屋と「ガリガリ君」で有名な赤城乳業とコラボした「ワッフルコーン桔梗信玄餅味」(希望小売価格・税込み246円)を発売してヒット。一方、人気の洋菓子・マカロンの生地でアイスをサンドした「キャラメルマカロンアイス」(東京・千葉限定、同248円)なども投入した。和洋を問わず、さまざまな工夫を凝らしたアイスが売り場に並んでいる。

 田矢さんは「高級感も冬のアイスの特徴です」と明かした。寒い季節は家族、友人とのパーティーだったり、一人なら“自分へのごほうび”として自宅でアイスを楽しむケースが多い。日本アイスクリーム協会も「夏は冷たさ、さっぱり感を楽しむのに対し、冬は暖かい部屋で濃厚な味わい、ぜいたく感、口どけを楽しむ傾向がある」と認める。そのため多少値段が高くても高級感のあるアイスが売れるという。田矢さんは「以前は値段が高くて高級感のあるアイスと言えば、ハーゲンダッツの独壇場でした。他社は200円を超える高価格帯の商品を出しにくかった。ところが『アイスのスイーツ化』でその壁が崩れ、各社が高価格でも高級感のあるアイスを次々と出してきた」と説明する。最近はベルギーの高級チョコブランド・ゴディバのアイスも店頭に並ぶ。数量限定で発売中の「ゴディバ チョコレートアイスバー」シリーズは税込み350円だ。

 メディアの影響もあるようだ。2015年12月に放送された「マツコの知らない世界」(TBS系)で「冬のアイス」が取り上げられ、ネットでも話題になった。「売り上げ増に貢献したことは間違いない」と田矢さん。自身もテレビに出演しているだけに、反響の大きさを確信する。

 2017年度は5000億円に達するとも言われるアイス市場。田矢さんは今年ヒットするアイスを「チーズなどの素材に特化した1点豪華主義の商品」と予想し、「仕事で疲れた日の夜は、コンビニアイスの食べ比べも楽しいですよ」と勧めた。

 ◆田矢 信二(たや・しんじ)1976年、大阪府生まれ。41歳。セブン―イレブン、ローソンに本部社員として勤務。現場経験を生かした「コンビニ研究家」として、企業講演、セミナーなどで講師を務める。ブログで発信する独自の情報が口コミで評判となり、テレビ、ラジオなどにも出演。著書は「セブン―イレブンで働くとどうして『売れる人』になれるんですか?」(トランスワールドジャパン刊)など。(株)サーベイリサーチセンター所属。

社会