羽田でロボリンピック開催計画進行中

スポーツ報知
昼は前面のタッチパネルを活用した案内、夜は警備を担当する「Reborg―X」

 2020年東京五輪・パラリンピックの期間中に、玄関口となる羽田国際空港で「ロボット版五輪」開催計画が進んでいる。警備、翻訳、清掃などの各分野で、世界中のあらゆるロボットが集結。利用客にサービスを展開し、競い合うという構想だ。羽田では16年、今年と2度の実証実験も実施。安全性などの課題がクリアされれば、ワクワク感あふれる夢のロボリンピックが実現する。(樋口 智城)

 東京五輪で国際線・国内線ともに大幅な旅客増が見込まれる羽田空港。期間中、人だけでなくロボットがあふれる光景が見られそうだ。同計画は経産省や電通などとタッグ。企画責任者の日本空港ビルデング・志水潤一事業開発部次長は「羽田の全ターミナルで、行き交う人が目に見える範囲にロボットを設置するのが目標です」と打ち明ける。

 すでに羽田では、敏腕ロボット集結の実現に向けて2度にわたって実証実験を開催。お掃除ロボから多言語対応の翻訳案内ロボ、重い荷物もスイスイ運ぶ物流ロボや深夜の侵入者があれば感知して警告音を発する警備ロボなど、計24体が実際に利用客の面前に立った。

 本番では日本だけでなく海外からも広く公募する予定。ドバイ、仁川、関空などに単体で設置されたことはあるが、世界中からあらゆる種類のロボが集結する試みは初めてとなる。過去の五輪でも、ここまで大々的にロボットが活躍することはなかった。

 今回の試みは、東京五輪という注目イベントを機に「日本=ロボット大国」を世界へアピールする狙いがある。日本はロボット実用化の規制が厳しく、米国発「ドローン」などの新ロボが生まれづらい環境。国や政府も、高齢化社会での人手不足も見据えたロボット産業活性化の起爆剤として位置づけている。

 各メーカーにとっても、ロボットをアピールする格好の競争の場だ。「“ロボ五輪”のような感じになって、注目していただければうれしいですね」と志水氏。利用客から高評価を受けて“金メダル級”の活躍をすれば、「ドローン」のような全世界への普及も夢ではない。今年1~2月の2度目の羽田実証実験には7種のロボが参加したが、倍率は約10倍と応募が殺到。予選と言える段階から、しのぎを削る戦いがあった。

 人との接触事故が起こった場合の対処や、各ロボットが連携して効率的にサービスできるのかといった課題もある。それでも志水氏は「五輪を機に、羽田空港を訪れた海外の人にも『ああ、日本って普通にロボットと共存できているんだ』って感じていただけるようなものを実現していきたい」と自信を見せる。アスリートがメダル獲得でその後の人生が変わるように、ロボ五輪もその後のロボット産業の行く末を変える…のかもしれない。

■様々な分野でサービスを競い合う、主なロボット

 ◆警備ロボ
 ▽「Reborg―X(リボーグ・エックス)」 自律走行型の警備・案内ロボ。実験では昼は前面のタッチパネルを活用した案内、夜は警備を担当。人や物に近づくと自動停止し、回避する機能がある。
 ▽「ヒアラブルデバイス」 空港従事者が装着する無線のイヤホンロボ。マイク、スピーカーのほかに顔の向きや姿勢、移動情報などを検出するセンサーを搭載。人員配置の把握や不審者の判別ができる

 ◆物流ロボ
 ▽「Relay(リレイ)」 手持ちの小さな荷物を運ぶ配達ロボ。円筒形で内部に荷物を収容するスタイル。「空港内で休憩する客に店舗から商品を届ける」といったサービスを想定。
 ▽「OTTO(オット)」 重い荷物を載せて運んでくれる箱形運搬ロボ。前後に搭載したセンサーで自律走行する。カナダの会社が開発し、すでに北米の工場で導入済み。

 ◆翻訳ロボ
 ▽「ロボコット」 米IBM製のAIを採用。かわいい動物型形状をしており、タッチパネルや音声で対話できる。日英中韓の4か国語で案内。
 ▽「シナモン」 多言語による案内が可能な人形型スマートロボ。カメラと自走機能を備え、人工知能(AI)と会話もできる。スマホによる遠隔操作機能を使った遠隔地からのオペレーター操作も可能。
 ▽「KIZUNA(キズナ)」 大型スクリーンのAI接客システム。声や文章で質問すると、画面に現れる女性キャラが人に近い自然な動きをしながら回答。日英中韓の4か国語で案内業務を行う。

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