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山岳部出身記者の「雪崩事故」…疑問に答えぬ栃木県教委、大人の失態で子どもの夢壊さないで

2017年4月21日16時0分  スポーツ報知

 高校山岳部で顧問の先生に雪山の素晴らしさを教えてもらい、大学でヒマラヤ登山を経験した者として、高校生ら8人が亡くなった栃木・那須での雪崩事故は残念でならない。世界の山々に出掛けて、その素晴らしさを味わって欲しかった。

 講習の責任者だった栃木県県高等学校体育連盟登山専門部委員長の記者会見を聞き、自分なりに事故現場の俯瞰図や地形図を検討したが、腑に落ちない点は多々ある。1つ目はなぜラッセル訓練の場所としてあの急斜面を選んだのか、ということだ。

 積雪登山で歩行訓練が必要なのは当然だ。だが、なぜ尾根筋へと続く急斜面を選ぶ必要があったのだろうか。樹林帯を選択したのは雪崩の危険を回避する意図があったのだろうが、雪崩の走路となることは明らかだったはずだ。それ以前にあの急斜面は高校生の登山訓練に適しているとはとても思えない。管理されたスキー場付近も30センチ程度の積雪があったそうなので、その近辺で十分だったのではないか。

 2つ目は樹林帯を登りきって、尾根筋まで出てしまったのはなぜなのか、という点だ。茶臼岳山頂へと続く尾根筋まで出たということは、茶臼岳登山の中止を判断した意味がほとんどなくなる。事故当時は吹雪いており、視界が悪かったとの情報もあり、樹林帯を抜けきったことに引率者が気づいていなかった可能性もある。だが、位置確認すらできない状態だったのならば、それこそ即座に引き返すべきだったのではないか。

 ラッセル訓練の1班を先導していたのは「登山経験が豊富」とされる教諭の一人だった。例えば「30年以上趣味で登っています」という中年は「経験豊富」と言えなくはないだろうが、その人物が正しい状況判断ができるかどうかは全く別問題だ。事故当時の状況についてはこの人が一番良く分かっているのではないだろうか。栃木県教委にこの教諭への取材を申し込んだところ「個人情報になるので」との頓珍漢な理由で拒絶をされてしまった。

 4月16日には事故の検証委員会の初会合が行われた。若い命を奪った事故の真相究明のカギを握るのは、事故当時現場にいた教諭から真実を聞き出すことではないか。山を愛する者として懸念しているのは、防げたはずの事故が起きたことを理由に、無闇と積雪期登山を禁止とする潮が広がってしまうことだ。10代のうちに山と触れ合うことの教育的効果があるからこそ、高校山岳部が存在して来たのではないか。大人が巻き起こした失態を理由に、子どもたちの夢を壊さないでいただきたい。(記者コラム・甲斐 毅彦)

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