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朝青龍に教えられたモンゴル人にとってのチンギス・ハーンの偉大さ

2018年3月7日15時0分  スポーツ報知
  • 朝青龍

 モンゴル出身の横綱・朝青龍は現役時代、気性が激しい反面、非常に繊細な一面もあった。普通に話していても急に機嫌を損ねてしまうことが、何度かあった。10年以上前、北海道巡業中。支度部屋で晩飯の話をしていて「横綱、ジンギスカンでも食べに行きましょうよ」と声をかけると、笑みが消えた。「なんで食い物の名前なんだ。不愉快だね」。不機嫌になった理由が分からず戸惑ったが、すぐに思い当たった。

 日本では羊焼き肉の名称となっている「ジンギスカン」の語源は、13世紀に世界帝国を樹立した初代皇帝、チンギス・ハーン(成吉思汗)だ。今もモンゴル民族から最大の尊敬を集める英雄の名前が、焼き肉に使われているのだから、モンゴル人が違和感や不快感を感じるのも無理はないように思った。もちろん「ジンギスカン」の名称に侮蔑の意味は込められていないだろうが、表現行為は当事者が嫌がっている場合は避けるのが原則だ。「ジンギスカンを食べに行こう」のひと言は、さぞかし不快に感じただろう。それ以来、朝青龍や他のモンゴル力士の前では「羊の焼き肉」というように心がけた。

 朝稽古後に呼ばれて、こんなことを言われたこともあった。チンギス・ハーンの埋葬地があるとされるスージン平原の発掘調査を日本の専門家が主導して行うことになったというニュースについて「日本政府と掛け合ってでも止めることはできないか」というのだ。民族の英雄の墓を外国人に「荒らされる」と受け止めたのだろう。学術的な調査だったとはいえ、モンゴル民族が神聖視している地域。敏感になるのも無理はない。

 小学館の月刊漫画誌「コロコロコミック」3月号に、チンギス・ハーンの肖像に落書きした漫画が載り、販売中止になった。朝青龍とのやり取りを思い出すと、モンゴルの人々の怒りの大きさが想像できる。(記者コラム 文化社会部・甲斐 毅彦)

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