猪瀬直樹「ドンの存在が都政の妨げ」東京の敵を斬った

2017年3月18日12時0分  スポーツ報知
  • インタビューに答える猪瀬直樹氏(カメラ・小泉 洋樹)
  • 猪瀬直樹著「東京の敵」

 元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏(70)が、1月に刊行した「東京の敵」(角川新書、864円)が話題を呼んでいる。自民党都連前幹事長の内田茂都議(78)と、2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(79)を糾弾しながら、知られざる都政の問題の核心を浮き彫りにした。一方、猪瀬氏は豊洲市場の移転問題で、20日の都議会の調査特別委員会(百条委員会)で証人喚問が決まった石原慎太郎元都知事(84)について、独自の見解を語った。(江畑 康二郎)

 大胆かつ挑戦的なタイトルだ。「東京の敵」とは、2人のドンを指す。「都議会のドン」といわれる内田都議に並び、森会長を「五輪のドン」と称した。政界の大物に斬り込んだ背景には、猪瀬氏が都知事時代に招致した東京五輪・パラリンピックに対する強い危機感がある。

 「ドンの存在が都政の妨げになっている。その構造について伝えたかった。都政の正常化と、東京五輪成功のために、現状を変えていかなければいけない」

 都議会で57議員を擁する最大会派自民党。そのトップに君臨する内田氏の支配力がさまざまな方面に影響を及ぼしているという。

 「内田氏が監査役を務める東光電気工事が豊洲市場の電気工事の入札に関わっていた。これは検証されなくてはならない」

 昨年7月の都知事選前にインターネット情報サイトやツイッターを通じて、「都議会のドン」の存在を世に知らしめ、大きな反響を呼んだ。あれから7か月たった今年2月、内田氏の地元で行われた千代田区長選で自民党推薦候補が惨敗。内田氏は今夏の都議選の不出馬を表明した。

 「都議は辞めるが、政界は引退しないと堂々と宣言した。今をしのげばいい、と考えているはずで油断はできない。ただ自民党は、都議選後に30人程度に減る可能性は十分ある」

 「五輪のドン」森氏に対しては、「不作為」を問題視。新国立競技場建設や五輪エンブレムなどの問題が相次ぐ要因は、ガバナンス不全にあると指摘する。

 「組織委幹部は森氏の仲間が多い。“お友達内閣”と言ってもいい。それが緊張感の欠如につながり、無責任体制ができあがってしまった。森氏は何か問題が起きても、なかなか会見を開かない。テレビに出演して話したことが正式発言のようになり、既成事実化していく。しっかりと説明責任を果たすべき」

 一方、現在の都政で最大の焦点となっている豊洲市場移転問題。移転決定時の都知事だった石原氏に対する百条委での証人喚問が20日に行われる。それに先んじて、石原氏は3日に会見。「移転を裁可した最高責任者であることは認めるが、担当部局で議論して総意として上がってきたものを都議会も承認した。都の行政全体の責任」などと訴えた。

 「石原さんは、会見するしかなかった。議会に呼ばれると、質問に答えるだけで自分が訴えたい主張はできないから」

 11年、土地所有者の東京ガスとの契約時に土壌汚染対策費586億円のうち東京ガスの追加負担は78億円と決まった。石原氏には「東京ガスに瑕疵(かし)担保責任はない」とする協定書にハンコを押した責任が突きつけられている。

 「専門家の話を踏まえた上で、長い過程を経て出た金額。民間企業の東京ガスは青天井の世界に踏み込めないわけで、瑕疵担保責任を負うのは無理。難しい判断だったと思う。豊洲の土壌汚染対策が高騰した経緯は説明してほしいが、石原氏個人に賠償責任を取れとまで言うのは行き過ぎではないか」

 1月の豊洲市場の地下水モニタリング調査で環境基準の79倍のベンゼンが検出されるなど移転問題に暗雲が垂れ込めている。

 「移転反対派は汚染ゼロリスクを要求している。汚染対策は徹底してやるべきだが、科学的にゼロはない。築地市場にも汚染やアスベスト問題があり、90年代に都庁も都議会も営業しながらの再整備は困難との認識に達し、豊洲移転は既定路線だった。(19日に発表される)地下水モニタリング再調査の有害物質の数値次第で、小池知事も移転の方向に舵(かじ)を切るのではないか」

 ◆猪瀬 直樹(いのせ・なおき)1946年11月20日、長野県生まれ。70歳。87年に「ミカドの肖像」で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2001年、小泉純一郎内閣の行革断行評議会委員に。道路公団民営化に貢献。07年6月、東京都副知事に就任。12年12月の東京都知事選で当選も、翌年12月に選挙資金借用問題で辞任。

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