函館大・小林俊己、天国の父と約束した“場所”で恩返し1勝誓う 明治神宮野球大会開幕

スポーツ報知
必死に外野飛球を追う函館大・小林俊

 第49回明治神宮野球大会はきょう8日、神宮球場で開会式が行われる。7年ぶり3度目の出場となる函館大(北海道6大学)は、9日の1回戦で環太平洋大(中国・四国三連盟)と対戦。7日は横浜市内で調整し、4番の小林俊己中堅手(4年)=秋田・能代松陽=は、フリー打撃で快音を響かせた。2011年3月の東日本大震災で父・正さん(享年50)が他界。天国の父と約束した“場所”で、恩返しの活躍を誓った。

 絶対に勝つから―。7日の練習で中堅の定位置に着いた函館大・小林俊は、じっと天を見つめ、心の中で語りかけた。矢のような返球が、捕手のミットに突き刺さる。躍動感あふれる守備に、好調さが伺える。「準備は万端です。とにかく一生懸命な姿を見せたい」。空から、最愛の父が見守っていることを信じている。

 7年前の2011年3月11日。秋田の実家を離れ、建設作業員として仙台の海上工事に従事していた父・正さんが、東日本大震災で発生した津波に巻き込まれ亡くなった。小林俊は当時中学2年生。大きなショックを受けたが「野球で結果を残すことが恩返しになる」。冷たくなった父の手を強く握り、誓った。

 生前、父の口癖は「走ることだけは負けるな」。野球経験はない正さんだが、気を抜いた走塁には厳しい声を飛ばした。小林俊は「一塁への駆け抜けや、攻守交代の全力疾走など当たり前のことをしっかりやる。一生懸命やれば流れは変わると言われた」。父の教えを、今も守り続ける。

 今秋、星槎道都大との代表決定戦は、1勝1敗で第3戦に突入した。1―1の延長11回1死。小林俊が放った遊ゴロが相手の失策を誘い、勝ち越しにつながった。打ち損じでも一塁へ全力疾走した小林俊は「父の教えがあったからこそ」と、勝利を呼び込んだプレーを振り返り、感謝した。

 高3の夏は秋田県大会決勝で敗退。昨秋は12季ぶりのリーグ優勝も、神宮切符を懸けた代表決定戦で敗れた。「野球の神様はいないのか」と嘆いたこともあったが、前を向いて歩み続けた。学生最後の大会でようやくかなえた、父との約束。小林俊は「いい姿を見せたいです」。神宮でも走り回って、天国の父に、勝利を届ける。(清藤 駿太)

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