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試合途中のフォーム変更…王者ホークスをうならせた日本ハム・上原の「対応力」

2018年6月30日14時22分  スポーツ報知
  • 6月27日、ソフトバンク戦に先発した日本ハム・上原

 6月28日。那覇でのソフトバンク戦を終え、札幌への移動便を待つ日本ハム・栗山英樹監督(57)が、報道陣を試すように言った。

 「昨日の上原が、途中(試合中)で変わったことに気付いた人がいるかどうか、分からない。だけど、それが急にできたりする、上原の能力の高さみたいなものがある」

 上原とは、27日の同戦で先発し、5回4安打1失点の内容で勝ち星こそ付かなかったものの、故郷・沖縄で先発としての役目を果たした上原健太投手(24)のことだ。

 ふがいない話ではあるが、私は指揮官が指摘した“変化”に見当が付かず、後日、上原本人に聞いた。すると、上原はこの試合で、ソフトバンクにある“クセ”を見抜かれていると感じていたという。「試合をやっていく中で、走者と打者の反応がちょっとおかしいな、と。なんだか(球種が)分かっている。クセが出ているのかなと」

 試合序盤から覚えていた違和感は、徐々に確信に変わっていく。3回1死一塁では一塁走者・西田に二盗を決められ、4回に中前打で出塁を許した柳田には、次打者の2球目に二盗を許した。いずれも球速の遅い変化球のタイミングでスタートを切られていた。「球種を絞って走ってくる。(球種が)分かっているんだなと」。このままではいけない―。試合中に対応に迫られた。

 4回まで1失点に抑えてベンチへ戻ると、すぐに中嶋バッテリー兼作戦コーチに相談した。セットポジションで構えた時のグラブの位置にクセが出ているのではないか、という結論に至り、5回からは意識的に変えた。

 試合中のフォーム変更という非常事態。だが「この形でしか投げられないということはない。どこからどう投げようと、気にせずに投げられる」という対応力が生きた。5回は危なげなく3者凡退で切り抜け、6回からはマウンドを中継ぎ陣に託した。

 試合は2点を追う9回に3点を奪って劇的なサヨナラ勝利となった。先発の役目を果たした左腕は、「展開的に点を与えられない中で、体力を消耗してしまった」と5回で降板したことを反省。一方で「試合をやっていく中で(クセに)気付かれたんだと思う。よく見ているなと思いました」。昨季の日本一に輝いた、常勝軍団の勝利にこだわる姿勢を肌で感じるという収穫もあった。試合後には、ソフトバンクのある選手から「よく途中(試合中)に(フォームを)変えられるな」と声をかけられたという。

 15年ドラフト1位で入団し、迎えたプロ3年目。過去2年間で通算1勝5敗と苦戦したが、今季は先発した3試合で1勝0敗、失点はわずかに4。かつて栗山監督が二刀流プランも考えたというほどの高い潜在能力が、ようやく開花しようとしている。

 次回登板も先発としての起用が見込まれる左腕は「まだまだ1勝ずつ積み重ねていきたい」と貪欲だ。そのまなざしには、徐々に自信が芽生えつつあるように見えた。(記者コラム 日本ハム担当・小島 和之)

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