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あなたの選ぶ甲子園史上最強の1番打者は? 私は大阪桐蔭・浅村栄斗を推したい

2018年7月9日23時37分  スポーツ報知
  • 2008年夏の甲子園大会。2回戦の金沢戦、8回2死でこの試合2本目となる左越え同点ホームランを放つ大阪桐蔭・浅村(投手・杉本、捕手・川本)
  • 優勝旗を手にする大阪桐蔭・森川主将(手前)と優勝盾を手にする浅村

 第100回大会の夏が始まり、地方大会の熱戦も本格化してきた。過去の甲子園での熱闘に思いを馳せ、「ベストゲームは?」「最高のエースは?」などをファン同士、語り合うのも楽しい。

 それでは、最強のトップバッターは誰だろうか。私は春夏計17度の甲子園取材経験で目撃した中から、大阪桐蔭の浅村栄斗(現西武)を推したい。2008年夏、全国制覇の立役者である。

 10年の歳月が流れても、浅村の金属バットが生み出した強烈な打球は、今でも鮮烈に記憶している。獰猛で、スピーディーで、恐ろしいほどだった。初戦の日田林工(大分)戦では左右に打ち分け5安打。2回戦の金沢(石川)戦では2発を含む3安打の大暴れ。1点ビハインドの8回2死、初球のストレートを左翼席にブッ飛ばす同点弾をたたきこんだ。

 勢いのまま、リードオフマンとして6試合で29打数16安打、打率5割5分2厘。3安打以上が実に4試合という暴れっぷりだった。決勝で大阪桐蔭は17-0のワンサイドで常葉学園菊川(静岡)を粉砕。「不作」とも評されたあの夏の甲子園で、スカウト陣の評価が最も上昇した3年生と言っていいだろう。

 浅村は、どの球団に行くのか。運命のドラフト会議まであと1か月に迫った秋、私は大分に飛んだ。「おおいた国体」の高校野球を取材するためだった。雨天で2日間中止となり、準決勝と決勝は実施されず、史上初の「優勝校なし」に終わったのだが、ここでも浅村の一発が脳裏に焼き付く。準々決勝。大阪桐蔭対横浜の名門対決だった。9回2死、サウスポー・土屋健二の内角直球を左翼ポール際に放り込んだ。高校通算22号。高校最後の打席を一発で飾った。「最後に打てたのは、今後に向けて良かったです」とクールにほほ笑んだ。

 この一撃を新大分球場のスタンドで見つめていたのが、西武の鈴木葉留彦編成部長だった。秋の国体は3年生にとって、ガチ勝負というよりは3年間頑張ったご褒美としての「卒業旅行」に近い。わざわざ大分まで最終チェックに訪れる西武の真剣度もハンパないし、そこでしっかりとラストアピールしてみせる浅村も、ただ者ではなかった。談話を求める私に鈴木編成部長は「評価は夏と一緒。いい選手と書いておいて」と笑うだけだったが、1か月後のドラフトでは3位指名で「西武・浅村」が現実になった。

 あれから10年。野性味あふれるプレースタイルは当時と変わらないが、体重は78キロから90キロとパワーアップし、パ・リーグを代表するタレントへと進化した。7年前、南郷キャンプの休日前にたまたまカラオケをご一緒する機会に恵まれたが、美声で歌ってくれたのは徳永英明のデビュー曲「レイニーブルー」だった。ああ、このグラウンド上とのギャップも、人気の秘訣なのだろうなと思ったものだ。

 今夜の所沢でのロッテ戦でも5点ビハインドを追いつき、迎えた6回1死三塁。当たり前のようにセンター前に決勝タイムリーを放った。辻監督命名の「獅子おどし打線」には欠かせない3番打者として、首位ライオンズを引っ張っている。

 躍動する若者を見つけて、その後の歩みを継続して追いかけていくことは、野球ファンにとって最高の喜びである。100回目の夏。あの夏の浅村のような、胸を躍らせる球児を目撃できる瞬間を夢見て、球場の強化プラスチック製の席に座り続けたい。(記者コラム・加藤 弘士)

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