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オリックスの本塁打誤審問題、打たれた近藤が追うある先輩の存在

2018年7月11日16時0分  スポーツ報知
  • 06月22日ソフトバンク戦の10回、リクエストの末に中村晃の打球が決勝2ランと判定された後に、吉本球審と話をする福良監督
  • 10回2死一塁、中村晃のライトポール際への打球を追いかける(左から)右翼手・ロメロと二塁手・福田。一旦はファウルと判定されるもリクエストの結果勝ち越し2ランとなる

 ロースコアの展開で迎えた再出発のマウンドは、尋常ではない緊迫感が漂っていた。6月27日の西武―オリックス戦(メットライフ)。3―3の延長11回から5番手で登板したオリックス・近藤大亮は2四球を出しながらも、無失点で切り抜けた。「良かった。またやっちゃったかと思いました」。うれしさというよりも、安どの思いが表情からにじみ出ていた。

 コミッショナー提訴にまで発展したオリックスの誤審問題。6月22日のソフトバンク戦(ほっと神戸)で中村晃に特大の飛球を打たれたのが近藤だった。試合後、福良監督が審判室にかけ込む事態となったが、オリックスのロッカールームも大荒れだったという。

 「なんやね!あれは」

 「誰が見てもファウルやろ」

 「納得いかへんわ」

 選手、関係者は口々に判定に対する不満を漏らしていたという。そんな中、渦中の近藤は口をつぐみ、黙々とユニホームから私服に着替えていた。

 「僕は絶対に何も言わないでおこうと。誤審かもしれないけど、あの打球を打たれてしまったのは僕だし、何を言っても言い訳になる。格好悪いじゃないですか」

 短いイニングで勝負するリリーバーは1本のヒット、被本塁打、失点が査定に大きく響く。綱渡りのようなポジションを生業(なりわい)とする近藤は、誤審によって防御率が下がり、黒星までついた。心身ともにダメージを負ったが、ある先輩の存在が頭の片隅に浮かんだという。

 「もちろんショックでした。でも、あのまま引きずっても切り替えられないと思ったんです。平野さんは本当に切り替えがすごい人だった。打たれても、次、次という姿勢を見てきましたから」

 昨季までオリックスに所属し、DバックスにFA移籍した平野佳寿はいつも前を向いていた。致命的な決勝打を浴びても、翌日はケロリとした表情で球場に現れる。ちょうど近藤に災難が降りかかった時も、海の向こうで26試合連続無失点の快挙を達成中。励みにならないわけがなかった。

 「平野さんには色んなことを教わった。そして、今は増井さんの背中を見ています。後輩の由伸(山本)も出てきましたし、みんなすごい人ばっかり。切磋琢磨(せっさたくま)していますよ」

 今回の問題に最善の解決策を探ることは困難だ。公平性を求めるオリックスの主張も理解できるが、斉藤コミッショナーが続行試合の開催を決断するのは容易ではないだろう。

 そんな中、最も苦しい思いをした右腕が不満も漏らさず、マウンドに立ち続けている。あの誤審以降、4試合連続無失点(9日現在)。野球の神様が、この男を見捨てるはずがない。

     (表 洋介)

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