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何が起こるかわからない高校野球…初戦敗退に翻弄されるカメラマン

2018年7月17日17時30分  スポーツ報知
  • 千葉商大付・専大松戸戦 8回2死一、二塁、好機で一ゴロに終った専大松戸のプロ注目の好打者・今里凌は天を仰ぐ(カメラ・泉 貫太)
  • 我孫子東・八千代松陰戦 6回から2番手で救援登板したものの8回途中で降板し、左翼へ回った八千代松陰の清宮虎多朗(カメラ・泉 貫太)
  • 夏の高校野球、東西千葉大会が開催されている千葉ロッテマリーンズの本拠地、ZOZOマリンスタジアムの右翼側(カメラ・泉 貫太)

 初戦の入り方。高校野球に携わる人たちにとっては永遠のテーマともいえるその難しさを、先日の取材中に改めて知った。今月15日の第100回全国高校野球選手権大会、西千葉大会の2回戦。予定された3試合は、第1試合が第1シードの習志野、続いて同じく第1シードの専大松戸に、最後は第2シードの八千代松陰と、1日で甲子園出場経験を持つ強豪3校が登場。気温33度の暑さにも関わらず、会場となったZOZOマリンスタジアムには多くの観客が詰めかけた。

 試合は第1試合から思わぬ展開の連続だった。すでに1回戦を勝ってきている佐倉を初戦で迎え撃った習志野の先発は、プロ注目のMAX143キロ右腕・古谷拓郎ではなく、最速142キロを誇るといわれる2年生右腕の飯塚脩人。しかしこの飯塚が乱調。2回に3四死球で2死満塁のピンチを作ると、佐倉の新井翔馬(166センチの小兵ながらこの試合4安打)に先制の2点二塁打を浴びて即降板。背番号1を背負うU-15代表経験者の右腕、佐藤将聖がマウンドに上がった(なお前出の古谷の今大会の背番号は10)。習志野打線は直後の2回、3回の攻撃で合計5得点し逆転。5回には2点差に迫られたが、6回には佐藤が2点本塁打、8回には適時打を放つなど自ら3打点の活躍。古谷を温存したまま8-5でなんとか佐倉を振り切ったが、第1シードの初戦としてはヒヤヒヤの勝利だったといえる。

 第2試合もすでに1回戦を戦ってきた千葉商大付を第1シードの専大松戸が迎え撃つ形。専大松戸の先発は、1年生から起用され続けてきた背番号1の右腕・古川信之介ではなく、今春の千葉県大会3位決定戦でノーヒッターを達成した2年生右腕の杉田智也。しかしこの杉田も誤算だった。初回に先制点を失うと、2回には先頭打者から連続して三塁打、二塁打を浴びて失点し即降板。たまらず古川が救援したが、この回さらに2失点し、2回を終えて4点のビハインドを背負うまさかの展開。3回、6回に2点ずつを返して同点に追いつく粘りをみせたが、直後の7回に2失点。攻撃陣も高校通算38本塁打を誇るプロ注目の好打者で4番の今里凌が3四球とマークされた後、8回2死一、二塁の好機に凡退。4回以降、二塁盗塁に3度失敗して好機を広げられなかったことも響き、こちらはまさかの初戦敗退となった。

 球場内の喧騒が冷めやらぬ中で登場した八千代松陰も、同じ形で我孫子東を迎え撃った。八千代松陰には「きよみや」ではなく「せいみや」という読み方で大会前から話題を呼んでいた190センチ右腕のエース清宮虎多朗(こたろう)がいたる。こちらの先発も2年生の左腕、広瀬健裕。初回に先制点をもらった広瀬健は前出の2年生先発2人と違い5回まで無失点の奮投。1点のリードを保ったまま6回からエース清宮に試合を託した。6回、7回をすんなり無失点で終えた清宮だったが、8回の先頭から四球と安打でピンチを作ると、左翼へ退き、3番手の左腕・佐藤圭悟の救援をあおいだ。145キロといわれる最速もこの日は139キロにとどまったが、このスポーツ報知の取材によると1か月前に右手中指のマメをつぶした影響があったとのこと。エースの不調が誤算を呼んだのか、この試合は8回に1点ずつを取り合い、八千代松陰が2-1のリードで迎えた9回、我孫子東の主将・柏木悠太郎が逆転サヨナラ本塁打。劇的結末の結果、1日でシード校が2校も初戦敗退するという珍しい光景を目撃することになった。

 今年は先日、フランスの優勝で幕を閉じたサッカーW杯と同様、高校野球も大会序盤からシード校やV候補と言われるチームの初戦敗退が続出している。今春のセンバツ甲子園で4強に進出した三重や、8強に残った石川の日本航空石川も敗退。昨夏、今春に続く3季連続甲子園を目指した北福岡の伝統校・東筑や、2人ともがドラフト候補という小林ツインズ擁する松本深志もシード校として迎えた初戦で散った。熊本では第1シードの文徳に第2シードの九州学院も初戦敗退。同じ九州では鹿児島の昨夏代表、神村学園も涙をのんだ。

 複数投手制が当たり前の昨今、全試合にエース投手が登板する強豪校は今やほとんどない。とくに夏の初戦は、来年のエースと目される2年生が春から経験を積んだうえで先発。投手力に余裕のある学校はそのまま3年生の控え投手に継投するなどして、エースが登板しないまま勝ち進んでくる学校もある。大会序盤は取材する側もその点を頭に入れておかないと、3試合も撮影してお目当ての選手が1人も出てこなかった、ということもざらにある。が、優勝候補の学校には落とし穴も待つ。シード校の初戦の相手はたいてい1試合を勝ってきた学校。試運転を終え、仕上がってきた相手と初戦を戦うのはなんとも不気味なものだろう。まして2年生先発に誤算が生まれ、序盤からビハインドを背負う展開になれば、攻撃陣も焦りを感じるもの。どんな強力打線も打線は水ものなのだ。試されるのは常に一定の力を出せる選手個人の精神力と、プロでも難しいとされる継投を含めた監督の采配力か。

 15日はカメラマンとして3試合を取材して、高校野球面に掲載されたのは記者の15行程度の雑感といわれる原稿が2本だけで写真は0枚だった。ただし別の紙面にその日の取材写真が掲載された。16日付終面の「本塁打ZOZO(増々)マリン」。ZOZOマリンスタジアムの外野部分にテラス席ができるというニュース原稿に、私がその日に撮影した球場最上階から外野部分を写した写真がついた。そう、八千代松陰が敗れた第3試合の9回、私はデスクからの要請で急遽、カメラマン席ではなくマリンの最上階にいた。画角を考えながら右翼席の外野部分を撮影している間に凄い歓声とともにファインダーの中に入ってきたのが、我孫子東・柏木くんの逆転サヨナラ本塁打だった。こんな終わり方をするとは自分が一番思ってもみなかった。アマチュア野球の関係者にとって初戦の入り方も難しいだろうが、アマ野球の取材もまた難しい。本当に何が起こるかわからない。でもだからこそ面白い。そんな魅力があるからこそ、どんなに暑かろうが疲れていようが、また球場に取材へ行きたくなる。高校球児の皆さん、ぜひ悔いのない夏を。(編集局写真部・泉 貫太)

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